プーチンの暴走を止められるか。イランとサウジを仲介した中国の底力

 

米国発のドタバタ騒ぎはもう結構だ

第2に、中国と米国は同じ次元で影響力を競い合っているのではない。中国は、外交とは国際紛争を対話を通じて平和的に解決するためにあらゆる努力を惜しまないことであり、つまりは戦争を防ぐ手段であるという普遍的な原理を掲げ、それを体現して見せようとしている。

それに対して米国は、特にブッシュ・ジュニア以来その傾向を強めトランプ時代に極端に達したのだが、

  1. 気に入らなければ国際機関や合意から一方的に離脱し、
  2. 敵と定めた相手に非難というよりほとんど罵詈雑言を投げつけ、
  3. 経済制裁を次々に繰り出し、またそれへの同調を同盟国・友好国に迫り、
  4. それも効かないとなれば〔経済制裁や封鎖は戦争の一歩手前なのだから当然だが〕戦争になるのも辞さずに軍事圧力を強め恐喝する、

という、まことに異常な憎悪剥き出しの自分勝手な対外姿勢を基本としている。離脱~悪罵~制裁~恐喝というのではヤクザも顔負けのならず者の行動様式で、バイデン政権も何とかそこから抜け出そうともがいてはいるものの上手くいかずに困っている。

上述のサウジ・イランの北京合意が「両国は国連憲章およびイスラム協力機構(OIC)憲章の原則と目的、ならびに国際条約および規範を順守することを約束」しているのは、月並みな外交的お題目のように聞こえるかもしれないが、これを捉えて王毅が閉会式のスピーチで「両国が国連憲章の趣旨と原則を順守すると強調したことを評価」し、それによって両国は「中東の平和・安定への道を切り開き、対話と協議を通じて国家間の対立を緩和するモデルを打ち立てた」と述べたことが示すように、米国に向かって「子供じみた戦争ごっこはもう止めましょうよ」と言っているのである。

しかしバイデンは同じ時期にオースティン国防長官をイスラエルに派遣し、ネタニヤフ首相との間で、イランの核保有の危険がますます切迫しているのに対応して軍事協力を強化することを決めた。

こうして、中国は21世紀的に振る舞おうとしているのに、米国は相変わらず20世紀的な冷戦心理に絡め取られたままである。

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