WBC優勝でも競技存続の危機か。激減する日本小中学生の野球人口

2023.03.31
Kasukabe,,Saitama,,Japan,-,March,5,,2020:,Kasukabe,Higashi,Junior
 

数々のスターを生み、まさに日本中が熱狂したワールド・ベースボール・クラシック。しかしながら我が国の野球界は今、瀕死の状態にあると言っても過言ではないようです。そんな「惨状」を取り上げているのは、政治学者でスポーツ界にも造詣が深い立命館大学政策科学部教授の上久保誠人さん。上久保さんは今回、日本の野球人口の減少が深刻なレベルにあるという事実を紹介するとともに、日本野球を存続の危機から救う方策を考察しています。

プロフィール:上久保誠人(かみくぼ・まさと)
立命館大学政策科学部教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。主な業績は、『逆説の地政学』(晃洋書房)。

WBC優勝で「野球人気」復活の兆しもお先真っ暗。日本のスポーツ界全体が抱える大問題

米国マイアミで開催された、野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の決勝戦で、日本が前回優勝のアメリカを3-2で下し、14年ぶり3度目の優勝を果たした。日本戦4試合の地上波放送の平均世帯視聴率は連日40%を超えた。WBCへの注目度は、「社会現象」といっても過言ではない。

日本代表「侍ジャパン」の栗山英樹監督は、「野球界の未来のために。次世代の発展のためにやっていきたい」「野球の生まれたこの地で大リーガーが集まるアメリカを倒して世界一になる。立ち向かう姿を見た子どもたちが『日本代表いいな。選ばれたら絶対にそこでプレーしたい』という空気を作りたい」と述べた。

また、大会の最優秀選手(MVP)に選ばれた大谷翔平選手が「日本の子どもたちがかっこいいと思って、野球をやりたいと思ってくれるはず。それがうれしい」と話し、大会最多の13打点を挙げ「オールWBCチーム(ベストナイン)」の一人に選ばれた吉田正尚選手も、多くの子どもたちに好影響を与えられたことを喜び「そういう子どもたちが増えて、こういう舞台に立ってもらえたらうれしい」と発言した。

「侍ジャパン」の監督・選手が、口々に「子どもたちのため」と発言する背景には、深刻な「野球人口の減少」という問題がある。WBC優勝をきっかけに、子どもたちに野球にもっと興味を持ってもらいたいという切なる願いがあるのだ。

小中学生の野球人口は、2007年に66万4,415人だったのが、2020年には40万9,888人まで急減した。その深刻さは、様々な地域で目に見える形で明らかになっている。

例えば、私の故郷である愛媛県は、松山商業、今治西、西条、宇和島東、済美など甲子園の強豪が群雄割拠し、景浦将、千葉茂、西本聖などプロ野球の名選手を数多く輩出し「野球王国」として知られた。その愛媛県の野球どころの1つ、今治市で衝撃的な事態が起きている。

それは昨秋、今治東、今治南、今治北高大三島分校、今治明徳の市内の4校が、野球部員の不足により、連合チームを組む事態となったことだ。この4校のうち、今治南は甲子園出場経験があり、かつてはプロ野球で活躍する選手もいた古豪だ。

この4校は、1~2年前には20名程度の部員がいたのが急減して単独で試合ができなくなったのだという。その他の高校も、一部の強豪校を除けば、部員10名台が多く、近い将来連合チームを組まなければならなくなる懸念がある状況だ。

つまり、ここ1~2年で「野球人口減少」は、さらに深刻なステージに突入しているといえるのではないだろうか。

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