日本に潜む習近平の手先。いつか必ず牙をむく「中国秘密警察」が監視する“対象”

 

在外中国人すべてがスパイや工作員になる可能性も

2010年に施行された国防動員法では、有事の際に民間人や施設などを軍事動員できることを定めた法律です。また2017年に施行された国家情報法は、個人や組織に対して国家の情報活動に協力することを義務付けたものです。これらの法律は在外中国人にも適用されます。

日本人は中国人を動員する2法の怖さを知らない

つまり秘密警察は、中国政府が在外中国人に対して他国での破壊活動や諜報活動を行うよう指示が出た際に、その指示を在外中国人が実行するかどうかを監視する役割もあるわけです。

なお、国家情報法については平時における情報活動への協力を義務付けているため、すでにさまざまなスパイ活動を在外中国人に指示し、その履行を監視しているとみていいでしょう。

その他、中国の反体制グループとつながりのある外国人や、中国に対して批判的な言動をしている外国人のチェックも当然行っているでしょう。そのような外国人が中国を訪れれば、スパイとして逮捕される可能性もあります。

このような秘密警察を中国が世界各地に置くのは、中国政府にとって中国人民がいちばん信用できないからです。孫文はかつて中国人民を「バラバラの砂」と表現しましたが、自己中心の国民性ですから、中国人が自国のために働くという意識はほとんどないのです。

もともと中国の監視社会というのは、伝説の黄帝時代から始まったとされています。実際に制度化されたのは、明の太祖(朱元璋)の近衛軍の秘密警察「禁(錦)衣衛」からとされ、三代目の世祖・永楽帝の宮中で活躍したことがよく知られています。

はじめは、特務である東廠の組織だけでしたが、後に人間不信が高じるにつれて相互監視のシステムを強化、西廠、内行省が創設されて全国の隅々まで全国民が監視されました。17世紀の清朝になってからも、スパイ制度は継承され、中国人はすべて「家奴」(家内奴隷)にされてしまいました。

20世紀に入ってから、中華民国も人民共和国も特務がないと安定できない社会になっています。全国をくまなく監視する体制としては、国民党統治下の「民衆服務処」、中国大陸では「街頭委員会」が有名です。

台湾では国民党一党独裁が終焉し、民主主義国家へと変貌しましたが、中国大陸では、企業内に党の細胞組織の設置を義務化し、さらにAIによる全国民監視を強めているわけですが、その監視体制を海外にいる中国人にまで広げているというのが、この秘密警察の実態なのです。

中国の戦争では、まずは権力者にとってライバルの軍隊を最前線に出して突撃させます。政敵の軍隊を敵に殺してもらうことで、国内での権力を確立することができるからです。朝鮮戦争では、毛沢東は国共内戦で降伏した国民党軍の兵士を最前線に投入しましたし、中越戦争では鄧小平の政敵の軍隊を最前線に立たせました。

とはいえ、そのような軍隊や兵士は敵前逃亡や降伏する可能性も高いでしょう。そのため、軍隊の後ろに、自軍を監視する督戦隊を置いていました。もしも逃亡したり降伏しようとする兵隊がいれば、容赦なく撃ち殺すのです。

中国の在外秘密警察も、この督戦隊のような役割を担っていると考えられます。人民に他国への工作活動を強いて、背かないように目を光らせているというわけです。したがって、在外中国人すべてがスパイや工作員になる可能性があるということを、日本人は肝に銘じておくべきなのです。

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