シラける日本の若者たち。岸田「異次元の少子化対策」では絶対に子供が増えないと断言できる理由

2023.04.27
 

「ダブルインカム・ツーキッズ」という生き方の提唱も

この連載では「ファミリーの所得倍増論」を提起した。これは、言い換えれば「正規雇用で生涯共働き」で「所得倍増」ということだ。妻が正社員として働き、夫と同程度の給料を得られるようになれば、単純計算で世帯年収が倍増すると考えるからだ。

かつて「ダブルインカム・ノーキッズ」という言葉があった。夫婦になって二人の年収を合わせて余裕のある生活基盤を持ちながら、子どもを持たずにそれぞれの人生の目標に向かうのが新しい生き方とされたことがあったのだ。

今は「ノーキッズ」では困るわけだが、ここで重要なのは「ダブルインカム」が余裕のある生活基盤をもたらすという考え方が以前からあったことだ。これからは、例えば「ダブルインカム・ツーキッズ」という生き方を提唱してもいいのではないか。こういうのが「将来への夢と希望」」が持てる政策の1つの事例と考える。

ところが現実は、高度成長期の成功モデルで、現在も根強い支持がある「年功序列」「終身雇用」の「日本型雇用システム」に根強い支持がある。若者がすぐに転職するというイメージがあるが、そういう若者が目立ってしまうだけで、実際はずっと同じ会社に働き続ける人は増えている。それは、このシステムが停滞する日本社会の中で「安定」をもたらしてくれるからだ。その支持は、「夢と希望」があるものではない。

その上、このシステムは「少子化」の進行に深刻な影響をもたらしている。結婚して子どもができると、妻は離職して専業主婦になるか、正規雇用の職を失い非正規雇用になることが多く、結婚すると所得が実質的に減ることが問題だ。

職場結婚を考える同期の正規雇用のカップルいるとしよう。年収は2人とも500万円。結婚で妻は退職する。2人で夫の年収500万円を使うことになる。一人当たり250万円である。子どもができるともっと少なくなる。

妻が非正規で働いたとしても、夫の500万円+100万円で合計600万円。やはり、一人当たり300万円で結婚前より使えるお金は少ない、2人がそれぞれ人生目標を持とうとしても、夫は家族を養うことだけで精いっぱいになり、妻に至っては人生目標自体を奪われることになる。家庭を築き子どもを育てることに「夢や希望」を持つのは無理である。

一方、結婚後に2人とも正規雇用で働き続ける「生涯共働き」ならばどうだろうか。年収が500万円+500万円=1,000万円の「ダブルインカム」となる。人生全体を考えると、年収500万円で40年間働けば収入の合計は2億円だ。これが夫婦2人なら世帯年収は4億円になり、その10%を貯蓄し続ければ40年後には4,000万円ほどの財産が作れることになる。

これならば、結婚したほうが使えるおカネが増えるということになる。結婚しようという気持ちになるし、子どもも複数持とうという気になる。家を買おう、車を買おう、外食しよう、旅行に行こう。人生の目標のためにお金を使おうという気持ちになる。

今、必要な政策は、若者が「苦行」することを前提に、その痛みを和らげるためにお金を使う「対症療法」ではない。それよりも、若者の「苦行」を取り去り、一人一人が多様な「将来の夢や希望」を描けるような政策が必要だ。そうすれば、豊かな人生のために、子どもを持とうという若者も出てくるかもしれないのだ。

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