ロシア寄りの姿勢を鮮明化させた中国
欧州歴訪中の中国政府の李輝ユーラシア事務特別代表は26日、最後の訪問地モスクワでロシアのラブロフ外相と会談したが、西側当局者の話として、ロシアがウクライナ東・南部を占領した状態での即時停戦を呼び掛ける「和平案」を、李氏が仏独などに提示したと言う。
ロシアのミシュウスチン首相が訪中した際も、習近平主席も、中ロ相互の「核心的利益」を重大とみて支持するという。中ロが、欧米を中心とする国際的包囲網に対して、対応していくことが確認されたようである。ロシアと中国の関係は、かつてないほど高レベルにあるという。
これに対して、ウクライナのポドリャク大統領府顧問は、「ウクライナ全土の解放を想定しない妥協のシナリオ」だと指摘し、「民主主義の敗北、ロシアの勝利、プーチン政権の存続、国際政治での衝突急増を容認するのに等しい」と批判した。
とうとう、中国のロシア寄りが鮮明化したことになる。これにより、欧米と中国の対立が明確化して、欧米対中ロの構図になることが、より鮮明になったようだ。
一方、ミリー統合参謀本部議長は25日、「ロシアが軍事的に勝つことはない」が、同時に、ウ軍がロ軍の占領地域を解放することも「軍事的に達成可能かもしれないが、短期的には無理だろう」とも述べ、戦闘の長期化に懸念を示した。
このため、停戦後、どうウクライナの安全を保証するかの議論が出ている。今回のウ軍攻勢で、ウクライナ全土の解放は無理であり、どこかで停戦となる。その時、ウクライナとNATO加盟の「西ドイツ」型にするか、自衛力増強の「イスラエル」型かの議論になる。
もう1つが、欧州議会、ハンガリーのEU議長国としての不適格性に関する決議案を作成し、その決議案は、「ハンガリーがEU法および欧州連合設立条約第2条に明記された価値観、さらには誠実な協力の原則と相容れないことから、2024年にこの任務を確実に遂行できるかを問う」ものだそうだ。
これによりハンガリーのEUにおける投票権が剥奪される可能性がある。もう少し行くと、欧州議会で、ハンガリー追放の議題が出る可能性が高まっている。
さあどうなりますか?
(『国際戦略コラム有料版』2023年5月29日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
この記事の著者・津田慶治さんのメルマガ
image by: Naga11 / Shutterstock.com