ワイモバイルが10月からの新料金プランを発表。「徹底的にシンプルにこだわった」というソフトバンク寺尾洋幸専務執行役員の言葉を紹介するのは、メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さん。今回の新プランには寺尾氏自身は導入を反対したサービスが2つあると、その背景を同氏の言葉を引いて解説。競合他社と比べて料金プランの設計でブレのない姿勢を見せるワイモバイルが、契約者を増やせるか注目しています。
ワイモバイル新プラン。責任者が「導入に反対」したもの
ワイモバイルは、10月以降、新料金プラン「シンプル2」に移行する。基本料金は従来よりも値上げとなるが、データ容量が増え、カード割引や光回線のセット割などを組み合わせることで、これまでに近い負担感を維持している。
寺尾洋幸氏は「プランには名前すらつけたくなかった」というほど、徹底的にシンプルにこだわったとしている。名前やブランドにこだわる他社とは大違いな印象だ。
そんな寺尾氏が「新料金プランに導入したくなかった。正直、反対派だった」と愚痴をこぼすのが「データくりこし」の採用だ。新料金プランでは従来通り「データくりこし」に対応している。
「データくりこしはユーザーからの要望が多く、導入を決めたサービスだが、正直、導入反対派だった。とにかく、データくりこしはARPUがものすごく落ちてしまう。しかし、ユーザーインタビューを何度も繰り返して、非常にニーズが強いサービスであることがわかり、導入を決定した」という。
もうひとつ、寺尾氏が「やりたくなかった」と本音で語るのが「1GB以下の場合、勝手に割り引く」というものだ。ワイモバイルの新料金プラン「シンプルM」では1GB以下の場合は割引が適用され1078円まで下がる。
記者から「20GBを選んでいるユーザーが、1GBも使わない状況なんてあり得るのか」という質問が飛んだが、寺尾氏は「これがあるんです。ボクはやりたくなかったが。数ヶ月に1回、旅行に行かれるのかどうか、その月だけ1GBも使わないという方が一定数、いらっしゃる。そういう人がいるなら、やるかということで今回、導入した」という。
ソフトバンクや他社のデータ使い放題プランでも、データをあまり使わない月は割引が適用される設計になっている。また、楽天モバイルも3GB以下は1078円という設定になっており、あれが意外と気になる立て付けになっているのも事実だ。やはり、実用的ではないが「使わない月は安くなる」という設計は、必要不可欠ということなのだろう。
寺尾氏の話は、ワイモバイルがスタートのころから聞き続けているが、本当にブレがなく、初志貫徹している感が強い。他社の場合、競合他社を意識しすぎて、ブレブレな料金プラン設計となっており、「策士策に溺れる」感が伝わってくるのだが、ワイモバイルに関しては、当然、他社を意識しつつも、軸をぶらしていない。
寺尾氏が「やりたくなかった施策」がユーザーに響き、ワイモバイルがこの先、どこまで契約者数を増やすことができるのか。NTTドコモ「ahamo」が作った「20GB」というデータ容量に、各社のサブブランドやオンライン専用プランが焦点を合わせるなか、どこが勝ち組になるのか、注目しておきたい。
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