長引くウクライナ支援や対露制裁による国内経済への悪影響等もあり、自国優先主義の方向に舵を切り始めたEUの有力国。米中ロの国際的影響力の低下もこの先さらに進むことは確実で、世界は混沌化の様相を呈しています。そんな中にあって日本に求められる役割を考察しているのは、日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さん。津田さんはメルマガ『国際戦略コラム有料版』で今回、国際社会の現状と今度の展望を解説するとともに、日本がこの先、世界でどのように振る舞うべきかについて自身の見解を記しています。
戦争で米中の経済状態に異変、世界は「混沌」日本の“幕末”の様相を呈してきた
米国人の70%が家計に心配であると回答し、米国成人の52%が、2020年3月のコロナ前と比べても経済的心配が増大しているとした。このため、米国がウクライナなど他国を支援するより、自国民を支援する方が先であると。これが、ウ軍支援で米国民の55%が反対している理由だ。
米国は、ホームレスが激増している。カードローンの焦げ付きも増加して、8月に23件の大型倒産も発生している。金利上昇で住宅ローン金利も上昇して、住宅不況にもなる可能性が出ている。
2024年11月大統領選挙では、このような米国の状況であり、トランプ主義者の当選が考えられる状況になり、欧州を中心にトランプ主義の米国と、どう付き合うのかの模索がされている。
特に英国は、EUからの離脱で、独自路線を進めることができるようになり、英国が目を付けたのが、日本である。日英同盟の復活しかないと、英国側は見ている。このため、TPPにも加盟した。
それと、スナク英首相は、メローニ伊首相を引き込み、行動を共にしている。それが日英伊の次期戦闘機開発である。ということで、イタリアも引き込んだようである。しかし、基本は日英同盟である。
日本は、まだ米国への期待が大きいが、2024年11月以降の世界情勢は、大きく変化することが、避けられないようである。
しかし、ドイツでも鉱工業生産は3カ月連続の減少で、ユーロ安が進んでいるなどで、極右政党のAfDの支持率が急上昇している。フランスでも右翼政党国民連合が支持率を上げている。
マリーヌ・ル・ペン党首時代に穏健化したが、プーチンの影響があり、2021年9月13日に党首をジョルダン・バルデラ氏にしている。
ドイツもフランスも自国優先主義であり、米トランプ主義者と同じような政策になる。
ということで、グローバルな観点で、世界を考える国が少なくなることは確実である。
ロシアと中国は、自国優先主義より他国侵略主義の国であり、米独仏よりも気を付けるべき国である。
そして、この中国の習近平国家主席もプーチンもG20には出席しないで、BRICS+での自陣営構築の方向のようである。この2カ国は反米で一致している。
中国もバブル崩壊でデフレであるが、地方政府の政策が違うので、地域により景況感も違うようである。国民が暴動を起こすことはない。しかし、海外への投資はできないことで、一帯一路の推進力は落ちる。発展途上国へのインフラ投資はなくなる。中国の影響力も落ちてくる。
というように、米中ロともに、世界への影響力が落ちてくる。世界は、混沌とした状態になり、大変な時代に突入する。世界が日本の幕末のような雰囲気になっている。
日本は英加豪や北欧諸国と、どのような世界を作るべきかを協議して、理念を明確にする必要が感じている。
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