今年4月、厚生労働省は昨年(2022年)1年間の自殺者数を発表。メディアは、小中高生の自殺者が初めて500人を超え、514人だったことを大きく報じました。ここで気になることの一つが、コロナ禍との関連。今回のもりさわメンタルクリニックの無料メルマガ『精神医学論文マガジン』では、コロナ禍前後で18歳以下の若年層が自殺関連の行動をとって救急受診や入院した数を比較したカナダでの最新研究を紹介。統計的に有意と言えないまでも“意味のある”増加傾向が出ているデータもあるとして、他者との接触が制限される時期には一層の注意が必要と伝えています。
パンデミック期間中における思春期の希死念慮・服毒・自傷
今回は、パンデミック期間中における思春期の希死念慮・服毒・自傷について、救急受診や入院がどのように変化したのか調べた研究をご紹介します。
パンデミック期間中における思春期の希死念慮・服毒・自傷による救急外来受診および入院件数
● Emergency department visits and hospital admissions for suicidal ideation, self-poisoning and self-harm among adolescents in Canada during the COVID-19 pandemic
カナダにおける研究で、10~18歳の若年者を対象としています。パンデミック前(2015年4月~2020年5月)とパンデミック期間(2020年4月~2022年3月)を比較して、自殺関連行動による救急受診や入院について調べています。
結果として、以下の内容が示されました。
- 希死念慮、服毒、自傷に起因する救急受診が全体の救急受診に占める割合は、パンデミック前→パンデミック期間で、2.30%→3.52%とわずかに増加しているものの、統計的には明らかな差異ではありませんでした。
- 入院に関しては、7.18%→8.96%で増加を示しており、この差異自体は統計的に大きな差異とはいえませんでしたが、傾向を調べる分析方法では意味のある増加傾向となっていました。
要約:『パンデミック期間には思春期の希死念慮等に由来する入院が増加傾向を示していた』
パンデミック期間など、外部環境との接触や他者との交流が制限される条件では、希死念慮に基づく行動化のリスクが増加する可能性を考える必要性を感じました。
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