パワーポイントの二の舞いに?AIツールの「誤った使用法」が逆に生産性を落とす

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全世界の人間の生活に大きな「革命」を起こしたと言っても過言ではない人工知能。その技術革新について、「これまでのどれとも大きく異なるものだと確信している」と、Windows95を設計した日本人として知られる中島聡さんは言います。そんな中島さんは自身のメルマガ『週刊 Life is beautiful』で今回、人工知能の現状とこれからについて詳説。さらに生成AIを巡る「2024年の傾向」を予測しています。

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

人工知能の今とこれから

2024年の最初のメルマガ、ということもあるので、現時点で最も注目すべき技術である人工知能について、現状と今後の展望について書いてみたいと思います。

この分野はこれまでの技術とは桁違いのスピードで進化をしているため、それぞれの分野の最先端がどこにあるのかを把握し続けるのすら難しい状況になっていますが、最低限、おおまかな流れぐらいは把握しておくことが重要です。

私はこの業界と40年以上関わっており、GUI、インターネット、モバイル、などの様々な技術革新を目の当たりにして来ましたが、今回の技術革新は、これまでのどれとも大きく異なるものだと確信しています。

ソフトウェアの作り方が根本的に変わりつつあり、それがオープン・イノベーションと相まって、これまでにない指数関数的とも言えるスピードで、さまざまな技術革新が日々、起こっているのです。

その根幹になるのが、Andrej Karpathyが2017年に提唱した「Software 2.0」で、それが何を意味するのかを理解して初めて、今起こっている技術革新が何なのか、そして、どんなインパクトをこの業界だけでなく、社会全体に与えるのかをイメージできるようになります。

Software 2.0とは、ひとことで言えば「人間(ソフトウェア・エンジニア)がちまちまとアルゴリズムを組み立てる時代から、ニューラルネットワークを活用して、マシンそのものにアルゴリズムを作らせる時代」を意味します。

誤解してほしくないのですが、これは(OpenAIのCode Interpreterのように)マシンがコード(プログラム)を生成する時代の話をしているのではありません。莫大な数のパラメータを持つニューラルネットワークが、機械学習の結果、人間が作ったアルゴリズムやコードの代わりに、問題を解決してしまうことを意味します。

一昔前まで、画像認識は人間が作ったアルゴリズムを活用して画像に含まれたさまざまな特徴を認識し、そこに写っている物を認識したり、位置を特定したり、ということをしていました。それには莫大な手間(プログラミング)がかかり、かつ、作ったプログラムはすぐに陳腐化してしまう、という欠点を抱えていました。

ニューラルネットは、その「手間」をマシンに任せることを可能にしたのです。

ソフトウェアを人間が作っている限り、その開発スピードには限界があります。そもそも優秀なエンジニアの数は限られているし、一人のエンジニアが1日に働ける時間も限られています。一つのプロジェクトに関わるエンジニアの数が増えると、どうしても生産効率が悪くなってしまいます。10人のソフトウェア・エンジニアを雇ったからと言って、10倍のスピードでソフトウェアを生産できるわけではないのです。ソフトウェアの規模が大きくなると、複雑さが増し、全体を理解することが難しくなり、最終的にはメンテナンスが不可能になり、陳腐化してしまいます。

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