発達には個人差があり、特に低学年の時期はそのバラつきが大きい。(幼児期は、生まれの1カ月の違い自体も割合的に大きい。)子どもができないと親は焦り教師も焦り、できないことを責めたくもなってしまうかもしれない。しかしながら、がんばってもどうにもならないという状況は往々にしてある。「そういうもんだ」と思って、見守り、じっくり待つことが大切である。
その時は、文字通り「忍耐」である。本人はもちろん、関わる大人にとっても、そうである。しかし、人生にはすぐに結果が出ないこと、どうしたらいいのかわからず答えがないものだらけである。そういうものを認めていく姿勢こそ、現在の教育に最も必要である。ネガティブ・ケイパビリティである。
親にもそれを伝える。あまり芳しくない出来や不適切な行動に対し、無責任に「大丈夫、できてますよ」とは言わない。それはその場しのぎの誤魔化し、嘘になる。
そうではなく「今はこれができていない」「しかし将来的にこういう見通し、可能性がある」ということを伝える。必要であれば、個別の支援や特別支援が必要なこともきちんと伝え、言いっぱなしではなく、そのための具体的道筋まで示す。誠実とはそういうことである。大切な相手に対してその場しのぎのお世辞やサービスでお茶を濁すのは、偽物の親切であり、背信行為である。
そもそも、単に同年齢の集団という乱暴な括りだけで、能力や発達が全くバラバラなのである。それができてなくても、いつかできるようになると信じる。とりあえずのOKを出す。今一緒にいて、不都合がなければいい。本人がそれを意地でも克服したかったら、それに付き合えばいい。どうせ好きなことには熱中するのだから、そこは放っておいてもそうなる。
焦らず、急がず、その状況に耐える。便利で速いサービスが当たり前になった現代にこそ、必要な教育であり、心構えである。
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