習近平政権の批判ありき。日本人が喜ぶ「つまみ食い報道」を繰り返すマスコミに踊らされる“おめでたい人々”

Beijing,,China,-,March,5,2024:,Xi,Jinping,Hearing,Premier
 

3月5日から11日にかけて北京で開かれた全国人民代表大会(全人代)。中国の国会にあたる全人代では同国の今後を知る上で重要な報告が多数なされましたが、日本メディアはこれまで同様、習近平政権を批判的に扱うことが可能な題材だけの「つまみ食い報道」に終始しました。そんなメディアを批判的に見るのは、多くの中国関連書籍を執筆している拓殖大学教授の富坂聰さん。富坂さんはメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』で今回、中国が何を成し遂げようとしているのかという視点を葬り去るような報道が、日本人に及ぼし続けている弊害を解説しています。

【関連】例年通りの「金太郎飴」状態。重要テーマに触れぬ日本メディア「中国報道」の怠慢

※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです

中国全人代のテーマは景気対策と国防、台湾問題だけではないという当たり前のことが伝わらない現実

どの国にも共通する課題だが、メディアの報道はすべてをカバーできるわけではない。

例えば日本の国会でも与野党論戦の的となる華々しいテーマの裏で、地味な法案がいくつも通っていて注目されない。そんな問題が日常的に起きている。

日本の国会に比べ極端に会期が短い中国の全国人民代表大会(全人代)も例外ではない。

全人代では冒頭、首相による政府活動報告(以下、報告)が行われる。報告は経済問題が中心になるが、実際はかなり網羅的だ。

日本では、その報告のなかから「日本人が興味を持てそうなテーマ」で、かつ「(習近平政権を)批判的に書ける」題材をピックアップし、短くまとめた記事が目立つ。ここ数年はGDP成長率の目標値にケチをつけ、国防費の伸びを「軍拡」と批判し、台湾問題で「中国の危うさ」を強調するというパターンが繰り返されてきた。

報道が不正確とは思わないが、報告の全文を読み、比べれてみれば「つまみ食い」感は否めない。中国が対外的にアピールしたい内容とのズレも深刻だ。

もちろん日本のメディアが習近平政権の意図を汲む必要などないし、独自の視点で中国を報じることに問題があるわけではない。しかし、中国が何を目指し、何を成し遂げようとしているのか、という視点まで葬り去ってしまっては、その弊害は小さくない。

例えば、前回の原稿でも触れた「新たな質の高い生産力」である。その前の党大会で打ち出された「中国現代化」と同じく、おそらく日本の読者の頭には、何の情報も残っていないのではないだろうか。

【関連】例年通りの「金太郎飴」状態。重要テーマに触れぬ日本メディア「中国報道」の怠慢

習近平政権がわざわざ「これこれこういう問題に取り組み、社会をこう変えてゆく」と宣言している事柄をメディアが正面からとらえなければ、中国の未来を予測する上で支障をきたすことは間違いない。

この記事の著者・富坂聰さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 習近平政権の批判ありき。日本人が喜ぶ「つまみ食い報道」を繰り返すマスコミに踊らされる“おめでたい人々”
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け