「外交の安倍」を今こそ。米とイランを独自案で仲裁すべき日本

shima20190726
 

一触即発の状況が続くアメリカとイラン。両国の関係改善のため、我が国として何かできることはないのでしょうか。ジャーナリストとして数々のメディアで活躍中の嶌信彦さんは今回、自身の無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』の中で、両国の複雑な関係を解説した上で、日本は二者択一ではなく、独自の仲裁案で両国の仲を取り持つべきと記しています。

緊迫米・イラン日本は仲裁を

アメリカとイランの戦争が一触即発の状況になっていている。イランがアメリカの無人偵察機を中東ホルムズ海峡付近で撃墜したことに対し、トランプ大統領はイランの軍事関連施設3ヵ所への攻撃を一旦承認したという。ただ攻撃10分前にトランプ大統領が実行を中止するよう指示したとしている。

アメリカ政権内ではポンペオ国務長官、ボルトン大統領補佐官、ハスペル中央情報局(CIA)長官ら強硬派は軍事攻撃に賛成だったが、国防総省高官らは限定的攻撃と考えていても大規模な戦争に拡大する懸念があり、中東の駐留米軍が危険にさらされるので慎重だったとされる。

アメリカとイランの40年対立

これに対しイラン側は、「無線で警告したが無人機がイラン領空に侵入し、国際法と国連憲章に違反した」と反論している。一方、国連は21日時点で全ての当事国が最大限に自制して欲しいと呼びかけただけで具体的な行動は起こしていない。

アメリカとイランの関係は、1970年代以降混乱を極めてきた。パーレビ国王時代は、アメリカ、イラン、サウジアラビアは、ワシントン、テヘラン、リヤド枢軸と呼ばれるほど緊密な関係にあり中東の原油価格の支配権を握っていた。しかし1979年イランで宗教指導者ホメイニ師の主導により宗教原理主義者たちが実権を握って若者たちの革命防衛隊が登場するとパーレビ国王一家はエジプトに亡命。さらにアメリカ大使館にいた館員たちが革命防衛隊の人質となってしまう。途中、何人かは脱出に成功し米軍も救出作戦を試みたが、結局400日以上にわたって人質状態におかれた。この間、館員たちは暴行などにあったといわれ病人も出している

アメリカによるイラン制裁が続いたが、その後イランと米・英・仏・独・中国・露がイランの核開発を制限する見返りに制裁を緩和する核合意が結ばれる。しかし、トランプ政権になるとアメリカは一方的に核合意から離脱しイランとの交渉が途絶え、核合意した国々との国際協調路線にもヒビが入っている。

戦争を望まない米・イラン

ただイランも経済制裁で経済は急激に悪化し、日量250万バレル輸出していた原油は半減し、5月にはさらに大幅な制限強化を打ち出したためイラン経済は困窮している。アメリカは制裁でイランを追い詰め現在の核合意よりさらに有利な合意を結びイランの力を縮小させたい狙いがあるようだ。しかし追い詰めすぎるとイランのタンカー攻撃やイスラエルへの攻撃にも発展し、アメリカイランの戦争へと発展する可能性もあるわけだ。

ただ両国とも戦争にまで対立を大きくする気はないという。何せイランは中東の大国であり、イラク戦争時のように簡単に壊滅できる相手ではないし、もし戦争となれば原油価格は急上昇し、特にイランの石油への依存が大きい日本への影響は計り知れない

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