東京オリンピックで、正式種目になってから初の金メダルを獲得した野球日本代表チーム。テレビの前で大喜びし、感動の涙を流した方も多いのではないでしょうか。そんな日本代表で活躍した山田哲人選手は、自身のグローブを「自費」で買っているということをご存知でしょうか。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では著者でMBAホルダーの青山烈士さんが、プロの選手が「自費でも買いたい」と思うほどの性能を持つグローブを製造している企業の戦略と戦術について詳しく紹介しています。
当たり前
今号は、品薄状態が続く野球用グローブを分析します。
● 株式会社ドナイヤ(野球用グローブ専門のファブレスメーカー)
守備が上手くなりたい野球少年をターゲットに「徹底した品質管理」に支えられた「しっかりと捕球できる」「プロと同じグローブが使える」等の強みで差別化しています。
メーカーから無償で道具を提供してもらえるプロ野球選手が、自費で購入するグローブとして、口コミが広がり、注目を集めています。
■分析のポイント
東京オリンピック2020の野球では、日本は悲願の金メダルを獲得しました。選手の頑張りはもちろんですが、様々なサポートがあっての金メダルだったと思います。
その野球の日本代表で活躍した東京ヤクルトスワローズの山田哲人選手が使っているグローブが「ドナイヤ」製ですので、「ドナイヤ」も金メダル獲得に貢献したと言えますね。
「ドナイヤ」が素晴らしいのは、“当たり前”にとらわれないというところです。
どういうことかというと、日本のプロ野球で、道具のメーカーはプロ野球選手に道具を無償で提供するのが“当たり前”、その選手に合わせてカスタマイズするのが“当たり前”なのです。プロ選手が使用しているのは自分の好みに合わせてオーダーした特注品ということです。
その“当たり前”に対して、「ドナイヤ」はプロ野球選手にも市販品を買ってもらう、カスタマイズはしないというスタンスですし、プロならば、道具が良ければ、カスタマイズなしでも結果を出せるということが“当たり前”と考えているようです。
さらに、大手メーカーでは、プロ選手が使用しているグローブを○○選手モデルとして売り出しますが、このグローブは、あくまでもモデルであって素材も含めて、実際のグローブとは大きく異なるようです。
「ドナイヤ」では、子どもたちにプロ選手が使用しているものと同じものを使ってもらいたいという思いから、山田哲人選手が使用しているものと同じものを購入することができます。市販品をプロが購入しているので、“当たり前”ですね。
このように、大手のメーカーとは、“当たり前”のとらえ方が全く異なります。全く異なるからこそ、業界で異質の存在になれているわけです。
“当たり前”ですが、大手メーカーと同じ“当たり前”の土俵で戦っていては、小さなメーカーでは、太刀打ちできません。「ドナイヤ」のように、揺るぎない思いを持って、自分たちの“当たり前”を信じて取り組んでいくことの重要性を改めて認識させられる好事例だと思います。
今後、「ドナイヤ」が、究極のグローブとして、どのように拡がっていくのか注目していきたいです。