月たった3千円。地域の消防団員をいつまでボランティアに頼るのか

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地域の防災活動を担う存在として欠かせない消防団員について、国の定めた月額報酬の目安は約3千円とのこと。ないに等しいこの報酬すらも団の幹部が搾取していたという驚愕の事例が報告されました。これでは3年連続で1万人以上消防団員が減少するのも当然と嘆くのは、静岡県立大学特任教授で軍事アナリストの小川和久さんです。今回のメルマガ『NEWSを疑え!(無料版)』では、主婦や定年世代に一定の訓練と義務を課し月額15万円程度の準常備消防組織の構築を提案。日常の防災が確立しなければ国の防衛力そのものも機能しないと警鐘を鳴らし、早急な実現を求めています。

消防団の準常備消防化が防衛力を高める

6月21日付の毎日新聞に、目を疑うようなトップ記事が掲載されました。

「消防団員に銀行口座を新規に開設させ、その口座の通帳やキャッシュカードを団幹部が回収し、行政から振り込まれる報酬を団員個人に直接渡さない不正が複数の消防団で行われていることが毎日新聞の取材で判明した。銀行口座を本人以外が管理するのは明らかな犯罪行為。「共助」の担い手として地域社会に貢献する消防団に何が起きているのか。(後略)」

これは明らかな犯罪行為です。市町村などが設置し、地域の防災活動を担う消防団員の減少が憂慮されて久しいのですが、その陰でこんな不正が行われ、それを許すような体質が団員減少を加速させていると、毎日新聞の記事は指摘しています。

総務省消防庁によると、昨年4月1日現在の全国の消防団員数は約80万5千人。過去最少を更新したとのことです。前年からの減員数は約1万3千人で、3年連続で1万人を超えています。一昨年のデータによれば、消防団員は、東京都、香川、鹿児島両県を除く44道府県で減少し、新潟の959人、静岡が779人、長野が718人と続いています。

総務省消防庁によると、少子高齢化や市町村が支払う団員の年額報酬が財源不足などのため、国の目安である1人当たり年額3万6500円を下回ったり、出動手当がなかったりと市町村で差が生じていることが減少の原因と見られ、設置された検討会では報酬を含めた待遇改善などについて話し合いが続いているとのことです。

しかし、生半可な処遇改善などで消防団員の減少に歯止めをかけようとしても、それが無理なことは報酬年額の目安が3万6500円とされていることでも明らかです。月額にして3000円です。中には月額1000円ほどのところもあります。消防団員は自分の職業を持っているほかに、全くのボランティアとして消防防災の任務に当たっています。危険な職務であることは東日本大震災で多くの犠牲者を出したことでもわかるでしょう。総務省消防庁は一体どうしようとしているのでしょうか。

実を言えば、同じような話は20年以上も前から一歩も前進していないのです。私は総務省消防庁の消防審議会の委員として、消防団の改革などについての小委員会の委員を務めてきました。

そして15年ほど前から、消防団を準常備消防組織に編成し、国全体の消防防災能力を向上させるべきだとして、次のような提案を繰り返してきました。常備消防とは私たちがお世話になっている普通の消防、つまり市の消防局などです。それを補完し、国の消防防災能力全体を引き上げようというのが消防団の準常備消防化です。

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