書道家 武田双雲メールマガジン

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  • 元気になれる
  • 言葉の意味を深く知ることができる
  • 人生を変える言葉に出会えるかも

武田さんと“書”との出会いを教えてください。

母が書道の先生だったので、3歳の頃から教えてもらってたんですよ。厳しく、細かく(笑)。はじめのうちはあまり好きじゃありませんでした。外で遊びたいですしね。でもだんだん好きになっていきました。それもきちんと書くのではなく、落書きが大好きで(笑)。自由に書くのが好きだったんですね、当時から。

小学生になると、たとえばひらがなの「た」をどこまで崩せるかなんてデフォルメして遊んでいました。「た」でも、いろいろな「た」があるんですよ。担任の先生が黒板に書く「た」と、母が書くそれとは印象がまったく違うんだけれど、でもきれいだったんですね。母の字もきれいだけれど、また違うタイプの美人もいるんだな、という感じでしょうか。

絵描きがこの世の中のグラデーションに気づくのと一緒で、僕は字のグラデーション、個性に気がついたんです。

ちなみに、その頃、いろんな字をデフォルメして書いていたおかげで、今でも一つの字をいろんな形に書くことができるんです。

本格的に書の道に入られたのは?

大学を卒業して、IT系の職場にいたんですけど、2年ぐらいたった時に、「字が上手だね」って言われたのがうれしくて、それで「名刺の字を書く仕事だったら、充分ビジネスになるのでは?」と会所の先輩に言われたんです。従来のパソコン文字ではなく、個性的な字の名刺っていいんじゃないかなって。しかも、人の名前って本人にとってものすごく大切なもの。それに価値を与えられるのではと思い、それで興奮して辞めちゃったんです。もっともまわりからは、「独立なんて無理だよ、危険だよ、飯食えないよ」って言われましたよ(笑)。

でもあの時は若かったんで、興奮のほうが勝ってしまった。思いついたらやらないと気が済まないっていう性格なんですよね。だから今でも、思いついたら壁とか障子とかにパッと書いちゃうんですよ(笑)。

武田双雲さん

その頃メルマガを始めたとお聞きしていますが。

そうなんです。今のメルマガを始める前、2001年に「簡単面白 書の歴史」っていうメルマガを始めたんですが、新規発行で紹介されただけで、400人ぐらい集まったんですよ。それがあまりにも嬉しくて、熊本の実家に戻ったばかりだったんですけど、飛び上がって喜んだ記憶があります。「こんなに読んでくれるんだ。どうしよう」って。

で、中国や日本の書の歴史を何とかふざける感じでちょっと面白おかしく、分かり易いように伝えていたんですよ。そしたらそれを光文社の担当の人が見てて、これを本にしたいっていうことで。そんな経緯でできあがった本が、処女作『「書」を書く愉しみ』っていう新書なんですね。

そうしたらこれがすごく評判が良くて、学校の試験とかにも使われて。さらに、たまたま「世界一受けたい授業」って言う番組のプロデューサーの目に留まって、「是非、テレビで授業やってくれ」という話になりました。

やったら僕の回の視聴率がトップクラスを取っちゃって、それから定番のレギュラー出演みたいになっちゃって。今じゃ、スペシャルの講師みたいな形にならせてもらっているんですが、そもそものきっかけはまぐまぐのメールマガジンなんですよね。僕にとって、メルマガっていうのは非常に大きな、何て言うか、礎になっています。

とんとん拍子じゃないですか!

いえ、かいつまんで話しただけで(笑)。最初のうちは飯食えないから、パソコン教室やったりしましたよ。でも意外に運が良くて、独立した年に雑誌とかから取材されましたし、ラジオからもわりと早く声がかかりましたね。“書道やってるお兄ちゃんがIT企業出身”っていう、アナログとデジタルのギャップが面白かったみたいで。そういう意味ではメディアとの運がすごくよかったですよね。ご縁があったというか。

テレビやラジオ、雑誌など様々なメディアで活躍されていますが、双雲さんの中でのメルマガの位置づけを教えてください。

メルマガってスーパーダイレクトなので結構強烈ですよね。僕には大きな存在に感じるんです。1000万人が見ているテレビに出ることと同じくらい、毎日1万人以上の方に直接届いて、その人たちに響いていくっていうこともすごいと思います。

受け取った人からも、人生までもが変わりましたとか、考え方がガラリと変わりましたとか、すごく暗かった気持ちが明るくなりましたとか、そういう反応がたくさん届くことも嬉しいですよね。あと、まぐまぐ大賞を2008年にいただいたんですが、それがすごくうれしかったことを覚えています。

現在、毎日一言ずつを配信なさっていますが、どんな思いで送られているんですか?

僕が送る言葉っていうのは、当たり前のことをもう一度考え直してみたり、忘れていたことを思い出したりとか、なんていうか“波紋”のようにその言葉が広がっていくことによって、毎日に彩りが出たり、自分の中で閉じていたものが開いたりする助けになれるんじゃないかって思っています。受け取った人の人生の枠とか壁がパーンってはじけるっていうか。さっき彩って言いましたけど、白黒に色がつくようなイメージですね。

その言葉ひとつひとつは、どういう時に生まれるんですか?

それはもう様々で、起きてすぐ出る場合もあるし、寝る前って時もあるし、突然出てきます。人と話してて思いついて、「ちょっとごめん」って、せっかく会話盛り上がってんのに中断しちゃったりとか(笑)。

今後、新たな展開は考えていらっしゃいますか?

僕は書道家なので何か、書も配信できたらいいなと思ってますね。もっとこうビジュアルと絡めたいっていうのはありますね。

アジアとかヨーロッパ、アメリカの人も取りこんでいきたいなとも思います。海外の人も取りこんでいけたら非常にうれしいですよね。

書は世界の人にはどう伝わるとお考えですか?

人間であれば、国に関係なく感動してくれますね。書って結局、形の美ですから、絵を見ているのと変わらないと思うんです。むしろ海外の人にしてみれば絵っぽいんじゃないですかね。もっと言えば、向こうの人の方が先入観がないので、「ワオ、ビューティフル」みたいな受け取り方をしてくれます。きれいな花と一緒ですよ。全く一緒。そこに理由は無い。僕らが外国の歌とか絵とか見て良いと思うのに理屈は無いですよ。後から理屈が入って来る。それと同じです。

武田双雲さん

書くのをすごく楽しんでいらっしゃるんですね。

楽しいですね~!もう、本当に楽しいですね。

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武田双雲さんプロフィール

1975年、熊本市生まれ。3歳から母である書家・武田双葉氏に書を叩き込まれる。東京理科大学理工学部卒、NTTに約年務めた後、2001年1月より書道家として創作活動をはじめる。2009年、NHK大河ドラマ「天地人」の題字を手掛け注目を集める。代表作品に「人生」「戦」「種」「波」などがある。著書多数。
公式サイト:http://www.souun.net/

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