牛めしの松屋が「中華食堂」に。激戦業界にあえて参入するワケ

aoyama20171129
 

今年8月22日、牛丼チェーンの松屋フーズがオープンさせた「松軒中華食堂」が話題を呼んでいます。同社としてはとんかつに次ぐ新業態となりますが、なぜすでに激戦が展開されている中華料理業界に参入したのでしょうか。そしてそこに「勝算」はあるのでしょうか。MBAホルダーの青山烈士さんが、自身の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』でその戦略・戦術を分析するとともに、「松軒中華食堂」の今後を占います。

競争することをいとわない

牛丼チェーン「松屋」が展開する注目の新業態を分析します。

松軒中華食堂(牛丼チェーン「松屋」が展開)

戦略ショートストーリー

コストパフォーマンスを重視する方をターゲットに「牛丼チェーン松屋で培ったノウハウ」に支えられた「手ごろな価格気軽に立ち寄れる)」等の強みで差別化しています。

こだわりの食材を使った本格中華がリーズナブルな価格で食べられることに加えて、ちょい飲みニーズに応えることで、顧客の支持を得ています。

分析のポイント

「競争することをいとわない」

牛丼の「松屋」の出店状況を見てみますと、2017年4月の段階で943店舗、半年後の10月には950店舗と微増ですが、とんかつ(松のや)の出店状況は2017年4月に119店舗で、10月には134店舗となっています。牛丼よりとんかつの方が店舗数が増えているということですね。

このデータからは、とんかつ店の方が成長余地があり、一方で牛丼店は、成長(出店)余地があまりないということが読み取れます。

牛丼チェーントップの「すき家」、そして「吉野家」の店舗もここ数年は横ばいですから、牛丼店は飽和状態であると言えます。だからこそ、牛丼業界で厳しい競争をしながらも牛丼以外の新しい業界にてブランドを構築することに各社が力を入れているわけです。

例えば、「すき家」グループも複数のブランドを持っていますが、最近では回転すしの「はま寿司」が、成長株のようです。ちなみに、「スシロー」「くら寿司」「かっぱ寿司」に「はま寿司」を加えた4チェーンは、回転寿司の4強と呼ばれているそうです。吉野家は、グループ会社の讃岐うどんの「はなまる」の店舗数を増やしています。

そういった状況の中で、「松屋」は、とんかつの「松のや」に力を入れながらも新たに中華に参入したということです。

やはり、「松屋」を見ていて感じるのは、牛丼という競争の激しい市場でしのぎを削ってきただけあって、新たな業界に参入する際も、競争することをいとわないということです。

できれば、競争は避けたいものですが、競争のないブルーオーシャンを探すのは簡単ではありません。ですから、競争がある中でも生き残るノウハウを持つ企業は強いと思います。

松屋にとっては、とんかつも中華も、競争は避けられませんが牛丼からみれば、魅力的に映っているのかもしれませんね。

そして、今回のお伝えしたいポイントは、まずは試してみるということです。松屋にとって、松軒中華食堂は、テスト店舗的な位置づけのように見受けられます。実際に、オープンしてから、すぐに営業時間を変更するなどお客さんの反応を見ながらオペレーションを変えているようです。

完ぺきに準備して、オープン後も完ぺきな運営を行えることが理想ですが、まずあり得ません。ですから、松軒中華食堂のように、試行錯誤をしながら良いお店勝てるお店を作っていくというスタンスは大事だと思います。その店の商品やサービスなどが売れるかどうかは、実際にお店をオープン(商品をリリース)してみないとわかりませんからね。

そして、重要なのはオープン(リリース)した結果をみて、改善して、その結果をみてまた改善するするということを繰り返すことです。そうすることで、自店の強み(磨くべきポイント)も明確になってきますし、その蓄積が差別化につながって、ひいてはブランドの構築にもつながっていきます。

競争がある中でも生き残るためには、こういったスタンスが必要なのだということを「松屋」は経験からわかっているのでしょう。学ぶことの多い好事例だと思います。

今後、「松軒中華食堂」がどのように成長していくのか注目していきたいです。

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