Amazonに激怒のG20。法人税を払わぬ巨大企業を追い詰める包囲網

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莫大な利益を上げ続けるAmazonが日本で税金を支払っていない事実は、先日掲載の「なぜAmazonは日本で法人税を払わずに済むのか? 元国税職員が解説」でもお伝えしましたが、「被害」を受けているのは我が国だけではないようです。今回のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』では著者で元国税調査官の大村さんが、日本と同じくAmazonが納税を行っていないG20が、同社に対して打ち出した厳しい姿勢を紹介しています。

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2018年4月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール大村大次郎おおむらおおじろう
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。

アマゾンと先進諸国の攻防

このメルマガの2月1日号「なぜAmazonは日本で法人税を払わずに済むのか? 元国税職員が解説」において、アマゾンが日本で税金を払っていないことをご紹介しました。アマゾンは、日本には会社の施設を置いていないという理由で日本国には法人税を払っていないのです。アマゾン本社は、アマゾン・ジャパンなどに販売委託をしているという形になっているのですが、アマゾン・グループの仕組みとして、アマゾン・ジャパンなどの収益はアマゾン本社に吸い上げられるようになっており、結果的にアマゾンは日本でほとんど税金を払っていないのです。アマゾンは、日本のネット販売事業で断トツの売り上げを誇っており、20%ものシェアを持っているのです。にも関わらず、日本では税金を払っていないのです。

このことについては、アメリカと日本との力関係も大いに影響しているということもご紹介しました。アマゾンが日本で税金を払っていないことについては、日米の税務当局で話し合いが行われたのですが、日本側が全面的に譲歩する(つまり税金を払わなくていい)形で決着したのです。しかし、アマゾンは世界中でこういうふるまいをしているため、このままでは済まないだろうということも、メルマガの中で言及しておりました。

で、さっそく、G20でアマゾンに厳しい姿勢が打ち出されたようです。以下のニュース記事を読んでみてください。

ネット通販 国別に課税 G20「一時的措置」導入へ

 

国境を越えたネット通販企業の電子商取引をめぐり、20カ国・地域(G20)が、国ごとに企業が稼いだ売上高に課税できる一時的措置を導入する方向で調整していることが19日、分かった。アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで同日開幕のG20財務相・中央銀行総裁会議で合意する見通し。進出国に支店などの恒久的施設(PE)がなくても課税できるルールを設け、通販業者の税逃れを防ぐ狙いだ。

 

G20財務相・中央銀行総裁会議は20日まで開催。経済協力開発機構(OECD)が16日に示した電子商取引に対する課税強化案の中間報告を軸に、具体的な合意内容をまとめる。2019年内にも企業が国ごとの売上高などの情報を公表するためのルールを策定。この情報を基に各国の税務当局が課税できるようにする方向だ。

 

国内外企業の無差別を原則とする世界貿易機関(WTO)のルールを踏まえ、企業経営に大きな影響を与えないよう、一時的措置とし、中小企業や適正に納税している企業などに配慮する事項を盛り込む。20年までには、ネット通販を展開している国ごとに適切な法人税を課税できる長期対策もとりまとめる方針だ。

 

現在の租税ルールでは、企業は進出国に支店などのPEを持たなければ、原則、法人税は本社がある国に納める。また、法人税は利益に対して課すのが原則だが、電子商取引では、売上高から人件費などを差し引いた利益算出の難しさも課題となっている。そのため、20年までにはネット通販などを展開している国ごとの利益を適切に算出できるルールを作り、PEの定義も見直す。

 

ただ、大手通販企業を抱える米国は、余分な税負担が雇用や企業成長を妨げると反発。長期的なルール作りは難航も予想される。

(2018年3月20日産経新聞配信)

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