推論AI・HBM・先端パッケージがテスト時間と挿入回数を伸ばす
AI半導体市場の追い風は、GPUの出荷増だけではありません。実際のサービスでAIを動かす推論処理が拡大し、用途別ASICやCPUの需要も強まっています。さらに、複数の半導体を組み合わせる先端パッケージでは、工程ごとに検査が必要です。
半導体の個数に加え、1個を検査する時間と検査を行う回数が増えています。顧客の設備投資計画も長期化しています。この変化が市場拡大率を上回るテスター需要を生み、同社の生産能力増強を急がせています。
<推論AI向けASICとCPUがGPUに続く需要の柱になる>
ASICは特定の処理へ特化して設計する半導体です。クラウド各社は推論処理の電力効率と費用を改善するため、自社仕様のAIチップを増やしています。会社は、用途別ASICの需要が将来GPUと同等以上になる可能性を示しました。
CPUもAIサーバー全体の制御やデータ処理を担うため、GPUの脇役ではありません。推論サービスが利用者へ広がるほど、種類の異なる演算半導体が必要です。会社はSoCテスター売上予想を9,995億円から1兆2,435億円へ上方修正し、生産能力の増強を加速しています(決算説明会資料14ページ)。
<HBMと高性能DRAMがメモリーテスター需要を支える>
HBMは複数のDRAMを縦に積み、高速で大量のデータを送るメモリーです。AIアクセラレーターの性能を引き出す部品であり、積層数や通信速度が上がるほど検査項目も増えます。高性能DRAM向け需要は1Qの増収を支えました。
ただし、メモリーテスターのシェアは短期的に低下する可能性があります。NAND向けで既存顧客への食い込みが弱く、製品切り替え期にもあるためです。新製品でシェアを取り戻せるかは、今後の受注に表れます。
2026年のテスター市場予想は130億〜145億ドルへ拡大
会社は2026年のテスター市場予想を130億〜145億ドルへ引き上げました。推論AI向けASIC、CPU、DRAMが成長を牽引します。市場金額には値上がりも含まれるため、数量増とは分けて見ます。
| 市場規模 | 2024年 | 2025年 | 2026年4月予想 | 2026年7月予想 |
|---|---|---|---|---|
| テスター市場全体 | 60億ドル | 90億ドル | 109億〜122億ドル | 130億〜145億ドル |
| SoCテスター | 41億ドル | 69億ドル | 87億〜95億ドル | 105億〜115億ドル |
| メモリーテスター | 19億ドル | 21億ドル | 22億〜27億ドル | 25億〜30億ドル |
<SoCテスター年産1万台と需要の18カ月可視化が成長を支える>
同社は27年3月末までにSoCテスターの年産能力を段階的に5,000台以上へ増やし、2028年末から2029年初めに1万台を目指します。構成差を調整すると、1万台は2020年時点の約2万台分に相当します。
顧客や供給網と先の需要を見通せる期間も、従来の約6カ月から18カ月へ延びました。先端半導体の製造枠やパッケージ工程が不足し、早期の設備計画が必要になったためです。先まで需要を見通せれば、過剰な生産投資を避けやすくなります。
5年で12倍、PER37倍の株価は安さより利益成長を織り込む
5年で12倍、PER37倍の株価は安さより利益成長を織り込む
アドバンテストの株価は、2021年末の2,725円から2026年8月5日の33,720円まで約12.4倍になりました。途中には半導体景気の悪化による下落もありましたが、2023年以降はAIサーバー投資を追う形で上昇が加速しています。
編集部では、AI半導体関連の中でも業績の裏付けが特に強い銘柄と評価しています。ただし、今の株価は来期以降もAI向け需要が伸びる前提まで織り込んだ水準です。割安株ではなく、今後も高い増益が続くと見られている銘柄です。

出所: アドバンテスト「2026年度第1四半期決算説明会」5ページを基にインベストリーダーズ作成
<2022年の調整を経て2023年からAI相場が加速>
分割調整後の年末株価は、2021年が2,725円、2022年が2,120円でした。2022年は高値2,845円から安値1,650円まで下落しています。半導体需要の循環悪化が、高い成長期待をいったん剥がしました。
その後は2023年末4,797円、2024年末9,198円、2025年末19,635円と上昇しました。AI用GPUとHBMの増産が検査需要へ波及し、株価は3年続けてほぼ倍増する勢いを示しています。
同社は2023年10月1日付で1株を4株へ分割しました。本記事の過去株価は、比較条件をそろえるため分割後の基準へ調整しています。
<決算前25,200円から33,720円へ上昇し年初来高値へ接近>
2026年の株価は3月31日に年初来安値19,720円を付け、6月25日には35,940円まで上昇しました。半導体株全体の調整と4月の会社予想への失望で振れながらも、長期の上昇基調は維持しています。
7月29日終値は25,200円でしたが、翌日の終値は27,935円、8月5日には33,720円となりました。年初来高値まで約6.2%の水準です。出来高を伴う急反発は上方修正への評価を示す一方、短期的な過熱も招きます。
<時価総額24兆円台・PBR23倍台では業績上振れの継続が必要>
8月5日終値を基準にすると、会社予想EPS911.64円に対するPERは37.01倍です。実績PBRは23.41倍、時価総額は自己株式を除く株数で概算して約24.4兆円となります。
27年3月期の配当予想は未定であり、予想配当利回りは算出できません。利益が急増しているためPERは以前より低下しましたが、資産価値に対する評価は今もなお、かなりの高水準です。現在値を支えるには、次年度以降の増益も必要です。
証券会社の目標株価は更新時点や利益前提が異なるため、本稿の評価軸には採用しません。