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「ベッセント・マジック」はもう錆びついた。為替介入・金利抑制・イラン制裁、市場が下した3連敗の烙印=斎藤満

トランプ政権の屋台骨を支えるとみられてきたベッセント財務長官の威光に、陰りが見え始めています。日米協調介入は円安トレンドを変えられず、力ずくの長期金利抑制も翌日には効果が消滅。イランへの経済制裁も中国に配慮した中途半端なものにとどまり、市場では「3連敗」と受け止められています。メルマガ『マンさんの経済あらかると』では、著者の斎藤満さんが、錆びつき始めた「ベッセント・マジック」の内実と、トランプ政権に走る亀裂を詳しく解説します。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)

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※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2026年8月31日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

錆びついたか「ベッセント・マジック」

市場では先週末のジャクソン・ホール講演以来、「強い議長」を印象付けたFRBのケヴィン・ウォーシュ議長の注目度が高まっていますが、その一方でベッセント財務長官の威光に陰りが見えるようになりました。トランプ政権の屋台骨を支えると見られたベッセント長官ですが、このところ彼の言動が市場では3連敗と見られています。

トレンド変化に失敗した為替協調介入

まず、7月末に日米通貨当局が市場に「協調介入」を明言しました。為替市場では久々の協調介入だったこともあり、円安トレンドが修正され、円高方向へのトレンド変化も期待されました。実際、過去の「協調介入」では、それを機に為替の方向性が変わるケースが多く見られました。

ところが、今回は様相が異なるようです。「無秩序な投機」を狙い撃ちして円安を修正しようとしましたが、投機のコントロールに失敗した可能性があります。7月末の介入当初こそ、投機筋はポジションの手じまいを見せました。投機筋の動きを反映しやすいシカゴIMMの通貨先物非商業取引を見ると、協調介入前の7月28日に16万3千枚あった円売り越しが8月4日には4万5千枚に縮小しました。

さらに翌週の8月11日には4万2千枚へとさらに「売り越し」が縮小しています。前回4月末の日本単独介入の際には10万2千枚の売り越しが6万2千枚に縮小したものの、翌週には7万5千枚にすぐ増えてしまったのとは明らかに異なり、「協調介入」の威力を見せつけたように見えました。

ところが、今回も8月18日には売り越しが5万3千枚へと増えています。そしてドル円相場も介入時には一時1ドル155円まで円高に修正したのですが、先週末にはまた160円台に戻しています。少なくともここまでは為替のトレンド変化は見られません。

市場にはまだ「日米協調介入」の威光を信じる向きが多く、目立った円売りの再開には至っていませんが、市場にも介入の限界を意識する声が聞かれます。ベッセント長官としても、たびたび為替介入に出ることには抵抗があります。米国が自らドルを売れば、米国に流動性の追加でインフレ圧力になり、前回のようにユーロを売れば、ECBからインフレを輸出するなと文句が出ます。

日本としてもこれまでは外為特会のドルを売ることで大きな為替差益を出し、予算の財源に回せたのですが、今後はこれを使えず、介入で売るドルは金利を払ってFRBから借りなければなりません。財政負担になる分、すぐには手が出ません。市場も介入がないと見ればまた円を売ってきます。ベッセント長官の「本気度」が試されます。

力ずくの長期金利コントロール失敗

その点、ベッセント長官の威信を傷つける結果となったのが、力による長期金利の押さえつけです。米国の30年国債利回りが一時5.32%をつけ、10年国債利回りも4.74%まで高まったのを見て、19日に長官は残存期間10年超、および20年超の既発国債の買い戻しの額を、従来の1回20億ドルから9月9日以降は40億ドル以上に拡大する、と表明しました。

これを受けて30年国債や10年国債利回りは低下したのですが、翌日にはまた上昇してこの効果が打ち消されてしまいました。日本のYCCのようなもので、当局による金利コントロールとの見方もありましたが、日本の場合は日銀の信用買いで行ったのに対し、米国は国債を発行する主体の財務省が行うので、財源がないと見られました。

そこで財務省は1兆ドル規模の一般勘定の資金を使えるので、財源に心配はないと説明、これでまた一時的に金利は下がったのですが、これにも限度があります。この一般勘定、もともとは政府の債務上限交渉が行き詰まり、政府機関が閉鎖されたときに、支払いが滞らないように準備されているもので、これを使ってしまえば債務交渉に支障をきたします。

市場を熟知していると見られたベッセント財務長官が、このような場当たり的な力ずくの金利コントロールをするとは思っていなかったようで、この措置が却ってベッセント長官の威信を低下させてしまいました。

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