記事提供:『三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年8月3日号より
※本記事のタイトル・リード・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです
観光立国など幻想だ。訪日外国人が増えても日本が潤わない理由
外国人観光客、2年間で1.8倍に増加
2020年東京五輪を控え、外国人観光客をもっともっと迎えようではないかという機運が高まっています。
実際、ここのところ訪日外国人数はうなぎ上りに増えています。2014年と2016年とを比較すると、わずか2年間で1340万人から2400万人、倍率にして1.8倍という目覚ましさです。
※参考(PDFファイル 全15ページ):http://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/since2003_tourists.pdf
また先ごろ、2016年の「旅行収支」が1.3兆円の黒字を記録したことがマスコミによって報じられ、一般国民を喜ばせています。なかには、日本はこれから観光立国を目指すべきだなどという、いささかおっちょこちょいなことを言いだす人も出てくる始末です。
たしかに、多くの外国人が(移民としてでなく)観光のために日本を訪れ、「おもてなし文化」のような日本のよいところを知ってもらうのは悪いことではありません。
また、外国人がたくさんお金を落として行けば、観光資源の豊富な地域は儲かるでしょうし、新たに外国人誘致のための観光開発に力を入れることで、経済波及効果が望めるかもしれません。
しかし、です。こういう議論が、果たしてどれだけこれからの日本経済全体や日本文化全体に資するものかどうかは、もっと慎重に考えてみなくてはなりません。
観光目的は全体の6割。増えているのは東アジアからの訪問者
まず、訪日外国人といっても、すべてが観光目的で日本に来るわけではありません。観光目的は、全体の約6割にとどまります。残りはビジネスその他なのです。
※参考(PDFファイル 全233ページ):https://www.mlit.go.jp/common/001084273.pdf
ビジネスでは、利にさとい中国商人などが、巧みに利益をかっさらっていかないとも限りません。
次に外国人の内訳ですが、韓国・中国・台湾・香港の4地域で全体の73%を占めます。欧米加豪の合計はわずか14%にすぎません。しかも、2014年当時、前者は67%、後者は18%でした。
※参考(PDFファイル 全15ページ):http://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/since2003_tourists.pdf
つまり、増えているのは東アジアからの訪問者であって、ヨーロッパや英米圏から日本を訪問する人たちの割合はむしろ減っているのです(絶対数は増えていますが)。数字を大きく押し上げているのは、近隣諸国だということがこれでわかります。
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