最近、近い将来相場が暴落し、大変な不況が世界的にやってくるのではないかという記事が以前よりも多くなっている。実態はどうなのか。その可能性を検討したい。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)
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株式市場に暴落の兆候?
最近、近い将来相場が暴落し、大変な不況が世界的にやってくるのではないかという記事が以前よりも多くなっている。市場暴落の警告はどの時期にもある。そうした警告を絶えず流しているいわば崩壊主義のサイトも多い。
しかしながら、最近この傾向が変化してきている。明らかに近い将来の相場の暴落と世界的な不況を警告する記事が増えてきているのだ。著名な経済記者やエコノミストもそうした警告を行うようになっている。
この状況は日本も同じだ。日銀が0.25%の利上げを行なった7月31日以来、日経平均も不安定な動きが続いている。8月5日に-7.61%の大幅下落を記録した後も相場は安定していない。9月に入っても1,800円を越えて下落している。
市場全体が、ちょっとした出来事に神経質に反応する恐々とした状態だ。
市場の崩壊を懸念する4つのファクター
警告をしているエコノミストや経済記者の記事を多く読むと、市場の暴落を懸念する理由となる4つのファクターが指摘されているのが分かる。そのうちのいくつかは日本の主要メディアでも取り上げられているが、以下にまとめた。
<要因その1. エンキャリトレードの巻き戻し>
最初のファクターはエンキャリトレードの巻戻しだ。これは日本の主要メディアでも報道されている点だが、確認しておく。
20年以上にわたるゼロ金利により、日本は最大の債権国となった。あらゆる投資家が、どこでもより利回りの高い資産に投資するために、安く円を借り入れる習慣を身につけた。
この戦略により、アルゼンチンの債務から南アフリカの商品、インドの不動産、ニュージーランドドル、ニューヨークの証券取引所のデリバティブ商品、暗号通貨に至るまで、あらゆるものが高値を維持してきた。
しかし、7月31日に日銀が金利を2008年以来の高水準に引き上げたことは、金融界に一種の激震をもたらした。エンキャリトレードの巻戻しである。円建ての債務を支払うために、手持ちのドル建て資産を売って円に変える円買いドル売りが加速したのだ。これが円高を加速させると同時に、世界的な株安を招いた。
日銀がが引き続き金利を引き上げるリスクは、ニューヨークから上海までの市場が直面している問題をさらに悪化させる可能性がある。日本国債の利回りが大幅かつ持続的に上昇すれば、債務と株価が予測できない形で不安定化する可能性があるのだ。
専門家はこれを「金融界のサンアンドレアス断層」と呼んでいる。多くの専門家は、7月31日の金融引き締めが最初の大きな変化であり、今後もさらに変化が続くとみている。日銀から大きなサプライズがもたらされるリスクは、今後数カ月間、トレーダーを緊張させ続けることは間違いない。
<要因その2. 米大統領選挙>
次は、11月5日の米大統領選挙だ。民主党候補のカマラ・ハリスと共和党の旗手ドナルド・トランプのどちらが勝利しても、ワシントンは引き続き貿易障壁を高めていく可能性が高い。もちろん、その規模は異なるはずだ。例えばハリスは、トランプが中国に課す予定だとしている60%の関税よりも低いだろうが、関税は追加するだろう。
しかし、この選挙戦は米国近代史で最も激しい論争を巻き起こすものとなりつつある。トランプは、選挙で負ければ2020年の選挙で票が盗まれたと主張する戦略を再び実行する意向をはっきり示している。
2020年の大統領選挙の騒乱が経済にもたらした影響は非常に大きかった。トランプ大統領が2021年1月6日に扇動した暴動は、アメリカの信用格付けを下落させたのだ。格付け大手の「フィッチ・レーティングス」は2023年、米国債のAAA格付け(トリプルエー格付け)を取り消したが、その決定の重要な要因として暴動の背景にある分極化を挙げた。「フィッチ・レーティングス」は、2021年1月6日の混乱は米国財政を危険にさらしている「統治の悪化を反映したもの」だと述べた。
さらに、米国の国家債務は35兆ドルを超えた。これが理由で格付け大手の「ムーディーズ・インベスターズ・サービス」は、米国債の最終AAA格付けは確実に危うくなると主張している。
どちらが勝つにせよ、11月5日の大統領選挙は新たな混乱の出発点になることは間違いないようだ。トランプが負ければトランプは票が盗まれたと主張して前回の選挙同様のキャンペーンを開始するだろうし、ハリスが負けても「アンティファ」などの急進左派系の集団がおり、暴力的な抗議を開始する可能性はある。
いずれにせよ、11月5日の大統領選挙でアメリカの分断と分裂はさらに深まり、これが米国債のさらな格下げの引き金になるかもしれない。当然これは、ドル安と市場の暴落の引き金になる。
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