<要因その3. 中国経済の弱まり>
世界第2位の経済大国である中国が勢いを失いつつあるという事実も、市場の不安感を高めている。習近平主席の成長促進努力にもかかわらず、「製造業購買担当者指数」が8月に4カ月連続で低下した。2023年4月以降、3カ月を除いて、拡大と縮小を分ける50を下回っている。
今後数カ月、成長を安定させる上での課題と困難は相当なものになるだろうと見られている。中国経済の減速で原油と銅の価格が下落している。中国政府が政策支援を強化する必要性がますます高まっている。
一方、前回の記事でも詳しく解説したが、最先端テクノロジーの分野における中国の圧倒的な優位性は、今後新しい製造業に活かされ、中国経済の新しい成長パターンを形成する可能性は高い。しかしそれには、少なくとも後2年はかかると思われる。その間、不動産バブルの崩壊がもたらした余波は続くはずだ。
<要因その4. 米経済の不況入り>
しかし、やはり中国経済よりも大きな懸念になっているのは、米経済の不況入りの可能性である。最近発表になった数値でもこれは明らかだ。企業の生産活動の活発さを表す「ISM製造業総合景況指数」は、46.8に低下した。前月(48.5)から1.7ポイントの下げだ。この数値は、50が生産活動の拡大と縮小の境目になっている。50を下回ると、生産活動が停滞していることを示している。
同指数は1-3月(第1四半期)末から比べると、8.7ポイントも下げている。これは、需要環境は相当に悪化していると企業の購買担当者がみていることを示している。
また、8月の農業分野以外の就業者の伸びは市場予想を下回った。「米労働省」が9月6日発表した先月の雇用統計によると、農業分野以外の就業者の伸びは前の月と比べて14万2,000人で、市場予想の16万5,000人程度を下回った。一方、失業率は4.2%となり、5か月ぶりに改善している。
こうした数値から、アメリカは多くの人が予想していたよりも速いペースで景気後退に陥っているかもしれないと警告する専門家も増えている。「米国の労働市場はもはやパンデミック前の水準まで冷え込んでいるのではなく、それよりも下がっている」と労働動向のアドバイスを行う「インディード・ハイリング・ラボ」のアナリストは述べている。
すでに7月の段階で、「連邦準備制度理事会(FRB)」のクリストファー・ウォーラー総裁は、「過去2年間よりも大きな失業の増加につながる可能性がある」と指摘していた。
大きくなる米経済の景気後退懸念
もっとあるだろうが、これら4つのファクターが懸念材料となり、不安感が高まっているのが現状だ。これが市場の不安定な動きを引き起こしている。
これら4つのファクターはどれも重要だ。しかし、やはりもっとも大きな懸念材料は、(2)の米大統領選挙による混乱と、(4)の米経済の不況入り懸念だ。誰が勝とうが、2024年の大統領選挙が混乱することは明らかだ。それは、すでに警戒信号が点灯している米経済をさらに悪化させることになる可能性は非常に高いように思う。
そこで、改めて米経済の実態をみるために、最新の状況を調べてみた。このメルマガでは何度も米経済の実態を報告する記事を書いているが、今回改めて確認して見ることにする。項目別に列挙する。







