竹田iPホールディングス<7875>は、名古屋市に本社を置く持株会社である。1924年創業の竹田印刷を前身とし、2023年4月に現商号へ変更した。社名の「iP」にはイノベーションとパッション、すなわち「溢れるほどの情熱をもって革新し続ける」という意味が込められている。祖業である印刷を基盤に、(1)印刷・グローバルパッケージ・BPO・ロジスティクス・DX・システム開発を含む情報コミュニケーション、(2)印刷機械・資材の商社機能を担うソリューションセールス、(3)半導体関連マスク、(4)不動産賃貸、の4セグメントを展開する。半導体関連マスクは、最先端半導体のウエハ露光用フォトマスクとは異なり、電子部品向け精密工業用写真製版(スクリーンマスク、フォトマスク)および電子部品実装用の各種マスクを用途に合わせて製造するもので、1987年に旧竹田印刷が製版技術を応用した新規事業として開始し、M&Aを通じて竹田東京プロセスサービスとプロセス・ラボ・ミクロンを中核とする重要セグメントへ成長、中国・タイ・ベトナムにも展開している。事業構成が独特であるため類似上場企業は存在しないが、情報コミュニケーションでは共同印刷<7914>やパッケージのダイナパック<3947>・朝日印刷<3951>などが部分的な比較対象となる。複数事業を持つこと自体ではなく、事業ごとに異なるトレンドを相互補完しながら、グループ全体のリソースを成長分野へ機動的に振り向けている。
同社の強みは、第一に、中核事業と位置付ける半導体関連マスクの技術対応力である。スクリーン・フォト・メタルの3種類のマスクを製造できる体制は独自性が高く、用途に合わせた最適なマスクを提案できる。2026年7月13日付で子会社化した大英エレクトロニクスはプリント基板の回路設計・基板電気検査・3D-MID設計サービスを手掛けており、従来持っていなかった検査領域を取り込んだことで、基板設計からマスク製造・検査に至るまで顧客ニーズに幅広く対応できる体制が整い、半導体関連分野の競争力が一段と高まった。第二に、ソリューションセールスの収益構造である。顧客の設備投資に連動する機械販売(フロー型)と、顧客の生産活動に連動する資材販売(ストック型)の組み合わせで、ストック型の資材販売をベースに収益を積み上げる。印刷専業会社の廃業が進むなか、勝ち残る会社に的を絞ってアプローチし、省力化・環境対応機器など印刷以外への商材拡大も進めている。第三に、情報コミュニケーションの構造転換力である。印刷単体ではなくBPO・ロジスティクス・DXを含めた総合提案とクロスセルを推進し、価格の適正化・工程の最適化・設備の集約化により付加価値と利益率の向上を図っている。
直近の業績を確認すると、2027年3月期第1四半期(8月10日発表)は、売上高8,199百万円(前年同期比3.9%増)、営業利益236百万円(同23.8%増)と増収2桁増益で着地した。セグメント別では、半導体関連マスクが売上高1,713百万円(同18.1%増)・営業利益147百万円(同29.4%増)と牽引役となった。AIサーバーやデータセンター関連投資の拡大を背景に一部の半導体・電子部品関連需要が堅調に推移した一方、中国経済の停滞や自動車・EV関連市場の回復の遅れで用途・地域による需要のばらつきはあるものの、中部テクノロジーセンター閉鎖後の生産移管効果、固定費削減、内製化および生産効率向上が利益を押し上げた。情報コミュニケーションは価格改定の浸透・案件構成の改善・生産効率向上で増益を確保。ソリューションセールスは資材等の販売増により増収増益となった。また、自社ブランド製品および新商品の拡販にも取り組んだ。
同日、中間期・通期の業績予想を上方修正した。中間期は売上高16,800百万円(従来予想比1.1%増額、前年同期比5.6%増)、営業利益・経常利益は据え置き、純利益を369百万円から651百万円(従来予想比76.4%増額、前年同期比52.5%増)へ引き上げた。通期も売上高を35,500百万円から36,000百万円(前期比4.4%増)へ、純利益を1,139百万円から1,450百万円(前期比30.1%増、EPS86.48円)へ上方修正した。修正の内容は、半導体関連マスクの堅調推移と大英エレクトロニクスの第2四半期からの新規連結による増収増益効果を織り込む一方、印刷関連事業の一部における需要の弱含み、中東情勢の悪化に伴う原材料価格への影響、大英の子会社化に伴う暫定的なのれん償却費も反映した。
将来戦略では、中期経営計画「Takeda iP Create a Value Project」(2024~2026年度)について、売上高・営業利益は2年連続で計画超過となり、計画以上の推移となっている。今期は中計最終年度として、PBR1倍超の早期実現を掲げながら事業ポートフォリオの変革を引き続き推進する。国内では印刷・半導体関連マスクの拠点・設備統廃合をさらに進め、ロジスティクスのサービス高度化、グローバルパッケージにおけるタイ新工場の本格稼働などに取り組む。半導体関連マスク事業は将来的に売上高100億円、2029年度に売上構成比25%を目指す方向が示されている。大英エレクトロニクスとのシナジー、すなわち同社の設計・検査に関する人材・技術・ノウハウと当社グループの製造技術・国内外の顧客基盤を組み合わせた、基板設計からマスク製造・検査までの一気通貫提案の強化と、共通顧客基盤における提案領域の拡大・フォトマスク等の受注機会拡大が成長ドライバーとなる。2024年に提供を開始した微細開口メタルマスクも、プリント基板の高精細化・高密度化ニーズに対応する新たな武器となる。グループシナジーが見込めるM&Aには引き続き積極的な姿勢であり、政策保有株式・低稼働資産の売却で創出した資金は成長分野へ振り向けていく。次期中期経営計画(2027~2029年度)ではROE10%・PBR1.0倍が目標水準になると思われ、M&Aを通じた事業領域拡大と市場の追い風を活かし、利益成長の実現と資本効率の向上に取り組む方針である。
株主還元については、連結配当性向30%以上と下限配当の設定を基本方針とする。今期は2026年4月1日付の株式分割(1株→2株)後基準で年間23円50銭を予定。今回の業績予想修正では配当予想は変更されていないが、上方修正後の予想EPS86.48円に対する配当性向は27%程度まで低下しており、配当性向30%以上の基本方針に照らせば増配余地が意識されよう。また、株主優待も実施しており、2,000株以上保有の株主は、クオカード1,000円分に加えて、「新潟県魚沼産コシヒカリ新米5kg」か「美術カレンダー:徳川美術館の名品」のどちらかを選定できる。
総じて、竹田iPホールディングスは、印刷を祖業としながら半導体関連マスクを成長エンジンとする事業ポートフォリオの変革が、業績と開示の両面で具体化してきた局面にある。PBRはなお0.6倍台と会社が掲げる1倍超の目標には距離があるが、次期中計で示されるROEの向上、半導体関連マスク売上高100億円構想、大英エレクトロニクスとのシナジー発現など、中計最終年度の仕上げと次期中計の公表に注目していきたい。
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