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ビール大手4社への強制調査は「財務省の茶番」だった。公取委を支配する財務官僚と酒類業界“長年の癒着”の正体=大村大次郎

2026年10月7日、公正取引委員会がアサヒ、キリン、サントリー、サッポロの大手4社に、カルテルの疑いで強制調査に入ったと報じられました。しかし、公取委は事実上、財務省の支配下にあります。しかも酒の価格は、長年にわたって財務省主導で横並びに保たれてきました。今年はビール関係酒の税率が統一され、発泡酒や第三のビールは増税となっています。メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』では、著者で元国税調査官の大村大次郎さんが、この強制調査の裏にある財務省とビール業界の長年の癒着と確執について解説しています。

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2026年10月16日号を一部抜粋したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:大村大次郎(おおむら おおじろう)
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に『あらゆる領収書は経費で落とせる』(中央公論新社)『悪の会計学』(双葉社)がある。

ビール各社に強制調査の裏側~財務省のせこい茶番~

2026年10月7日、公正取引委員会が、アサヒビール、キリンビール、サントリー、サッポロビールの大手4社に対し、独占禁止法違反(カルテル)の疑いで強制調査に入ったということが報道各社で報じられました。

カルテルというのは、商品の価格を各社が連絡し合って競争にならないように同じくらいの価格に調整するという行為です。

この強制調査は、ビール4社の社員の自宅や地方支店にも及ぶという大々的なものでした。

公正取引委員会が飲食料品を巡って犯則調査の強制調査を行うのは今回が初めてでした。

まあ、「ビール大手4社はとっても悪いことをしていました」という報道がなされているわけです。

筆者はこの報道に失笑を禁じえませんでした。

というのも、これは財務省の茶番だからです。

公正取引委員会の強制調査の話だから財務省とは関係ないのじゃないか、と思う人もいるかもしれませんが、公正取引委員会というのは事実上、財務省の支配下にあります。

公正取引委員会のトップである委員長は、財務官僚の指定席になっています。

これは調べれば誰でも確認できます。

また公正取引委員会の幹部ポストにも、財務官僚が多く就いています。

つまりは、公正取引委員会は事実上、財務省の下部組織なのです。

そして財務省と酒類業界というのは、長年癒着関係にあり、酒というのは長年、国家的なカルテルの状態にあったのです。

実際ビールの値段は、ずっと各社ほぼ横並びでしたよね?

何十年も各社がほぼ同じ値段であり、何らかの操作が行われていたことは明らかなのに、なぜ今頃になって強制調査をするのか?という話なのです。

今回は、財務省とビール業界の長年の癒着と、昨今の確執についてお話したいと思います。

財務省と酒類業者の癒着

酒税というのは、今では大した税収ではありませんが、戦前から戦後まもなくまでは税収の柱でした。

国税の中で、税収NO1だったこともあるのです。

現在は、第5位あたりをうろうろしています。

財務省(旧大蔵省)としては、酒類業界というのは金の卵でもあり、監視の対象でもありました。

戦後しばらくは酒の密造も絶えなかったからです。

「マルサ」として有名になった「国税局査察部」というのも、最初は密造酒の取り締まりのために作られた部署だったのです。

財務省(旧大蔵省)は、正規の酒類業者とは緊密な関係を築きました。

そして業者を指導して酒の価格は事実上の公定価格とされていたのです。

「酒税は大事な税収なので酒造業者や販売業者がつぶれては困る」というのが、その理由でした。

しかし、実際には、酒類団体に旧大蔵省の職員が天下りなどをして両者は癒着しており、業界を守るために、旧大蔵省が先頭に立って価格の調整や、新規参入業者の制限をしていたのです。

だから30年くらい前までは、酒類の販売免許を取得するのは非常に難しかったし、酒の安売りをすることもなかなかできなかったのです。

酒の安売り業者が出現すると、財務省の下部機関である税務署が指導に入ったりしていたのです。

また昔は古臭い酒屋でしか酒は買えず、コンビニやスーパーも酒の販売をしているところは少なかったのです。

それは酒の販売免許が取りにくかったからです。

酒の販売免許は、業者が条件をクリアしていても、近隣に酒屋があれば交付されていませんでした。

既存の酒屋の既得権益を守るためです。

つまりは、財務省(旧大蔵省)を挙げて、酒の公正取引(自由競争)を妨げていたのです。

財務省とビール大手4社の仲たがい

しかし90年代に入るくらいから、酒の安売りが制限されていること、酒の販売免許が取りにくいことが、批判されるようになりました。

明らかに公正取引(自由競争)が妨げられているのだから、当たり前です。

その批判に押されて、酒類の販売免許が緩和されました。

事業者が要件を満たしていれば、取得できるようになったのです。

だから90年代後半あたりから、コンビニやスーパーなどでも酒を買えるようになったのです。

そして酒類の免許の緩和は、酒の販売業者だけじゃなく、酒の製造業者の方にも及ぶようになっていました。

90年代くらいまでは、新たに酒の製造免許を取ることは事実上不可能でした。

しかし世界中の国々では様々な地域に地酒があるのに、日本では地酒がなかなか作れないということで、批判を浴びるようになりました。

それを受けて酒類の製造免許も事業者が要件を満たせば取得できるようになったのです。

そのため、各地で地酒や地ビールがつくれるようになったのです。

これに猛反発したのがビール業者です。

酒類の中でもビールには特に高い税金が課せられています。

ビールというのは、昔は高級酒でした。

そのため、日本酒や焼酎にくらべて、税率が高く設定されていました。

高度成長期あたりから、ビールの消費量が激増し、普通の人もビールを飲むようになりました。ですが、ビールの税率は下げられませんでした。

それは、あまりにも早くビールが普及したために、税率を下げる議論がされてこなかったからです。

そして、ビールが普及することにより、酒税の中心が清酒からビールに代わってしまったので、ビール税を下げることが難しくなったのです。

また高度成長期当時は、ビールメーカーは、高いビール税を文句も言わずに払っていました。

なぜかというと、前述したように製造免許を取るのが非常に難しく、事実上、閉鎖された業界だったからです。

大蔵省の下部組織である国税庁は、酒類の製造免許の許認可権限を持っています。

そして、国税庁は、何十年もの間、新規のビールの製造免許を出していませんでした。

つまり、ビール業界は、事実上、国税庁によって新規参入が閉ざされており、守られた業界だったのです。

つまり、ビールメーカーとしてはビール税は高いけれど、国税庁から守ってもらっているわけだから、おとなしく税金を払っておこうということだったのです。

しかし、酒造免許がなかなか許可されないことが公正な競争を妨げているとして、世間でたびたび批判されるようになり、ビールなどの製造許可は緩められ全国各地で地ビールのメーカーが誕生しました。

そのため、既存のビールメーカーは財務省、国税庁の言う事を聞かなくなったのです。

ビール戦争の勃発

そして既存のビールメーカーが、発泡酒をつくるようになったのはその頃からです。

ビールメーカーとしては、「これまでは守ってくれていたから、おとなしく高い税金を払ってきたけれど、守ってくれないなら高い税金は払わない」というところでしょう。

ビールには、発泡酒とか第三のビールとか、同じような味なのにたくさん種類があり、値段が変わってきたりしますが、なぜそうなっているのか一般の人にはなかなかわかりにくいですよね?

それは、酒税が大きく関係しているのです。

ビール350mlの値段はだいたい230円前後ですが、かつてはそのうち77円が酒税でした(2020年まで)。

酒税分を除いた350mlのビールの値段はだいたい150円程度です。

つまり、ビールには50%以上の超高率の税金が課されていたわけです。

こうしてみると、本来ビールは、清涼飲料水と同じくらいの値段ですよね?

にもかかわらず酒税があるので240円も払わされていたわけです。

で、ビールメーカーとしては、なんとかしてこの高い酒税を引き下げたいと思ったわけです。

価格が安い方が、たくさん売れますからね。

こんな高い税率が課されているのは、お酒の中でもビールだけなのです。

そのため、ビールメーカーは、ビールの税率がかからないような、税率の安い「ビールもどき」をつくろうとしてきたわけです。

それが発泡酒であり、第三のビールだったということです。

高い税率がかかるビールというのは、製法上の定義が細かく定められていました。

簡単に言えば、麦芽比率が50%以上になると、高い「ビール税」がかかるのです。

しかし、麦芽比率が25%未満の場合は、「発泡酒」という扱いになり350mlあたり税金は46,99円になります。

そして麦を使わない製法でつくったビール風味の酒「第3のビール」の場合は、雑酒という扱いになり28円で済みました。

そこで、ビールメーカーは、こぞって発泡酒や第3のビールをつくるようになったわけです。

もちろん、酒税がかからない分だけ、酒の値段は安くすることができます。

不況が続く日本では、発泡酒や第3のビールは大歓迎され、いずれも大ヒットしました。

財務省としては、面白くありません。

ビール製造業者が、税率の安い商品を開発するたびに、新しい規制をつくったり、税率をひき上げるなどしました。

それに対してまたビール製造業者は抜け穴を考えるというような、いたちごっこが30年も続いていました。

安い酒に大増税

そして、ついに今年、財務省とビール製造業者の仁義なき戦いに終止符が打たれたのです。

税制改正により、ビール関係酒の税率が統一されたのです。

ビール、発泡酒、第3のビールも350mlあたり54,25円となったのです。

ビールは若干、安くなったものの、発泡酒、第3のビールは高くなります。

しかも、財務省はどさくさに紛れてビール関係酒だけではなく、缶チューハイの税率も350mlあたり28円から35円に引き上げました。

つまりは、一番安い酒の税率を大幅に引き上げたわけです。

もちろん、これは国民にとっては腹立たしい話です。

昨今の物価高において、やっていい施策ではありません。

財務省に対して怒りが向かっていたところに、公正取引委員会の強制調査がビール会社に入ったというわけです。

というように、公正取引委員会の強制調査は「ビール大手4社が悪いことをしていました」という単純な話では、まったくないのです。

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image by:StreetVJ/Shutterstock.com

「大村大次郎の本音で役に立つ税金情報」(2026年10月16日号)より一部抜粋・再構成
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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元国税調査官で著書60冊以上の大村大次郎が、ギリギリまで節税する方法を伝授。「正しい税務調査の受け方」や「最新の税金情報」なども掲載。主の著書「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)

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