迷惑じゃない。難民を受け入れたオランダ市民の「意外」な反応

 

思ったほど「迷惑」じゃなかった

各種収容施設の地元民3,300人を対象に調査が行われました。うち200人はセンターから500m圏内に住む人たちです。難民を受け入れたことで経験した迷惑の程度について尋ねたところ、「かなりあった」が6%、「ややあった」が9%で、否定的な回答は計15%に留まりました。そして「ほとんどなかった」が25%、「まったくなかった」は過半数を超えています。

興味深いのは、収容センターのない地域住民の回答です。難民の受け入れによって被ることが「予想される」迷惑の程度について、「かなりあると思う」と答えたのが10%、「ややあると思う」が39%で、約半数が否定的に想定しています。

ちなみに、調査対象の地元民3,300人のうち、実際に経験した「迷惑」の内容を示したのは133人だけでしたが、その中で最も多かったのは「道端でたむろする」(24%)。次に多いのが「1人で外を歩くのが不安になった」「(公共)施設が混雑する」(各13%)。その他には12%が「交通安全を脅かす行為」を挙げています。これには、観光客もよくやってしまう自転車道の通行妨害も含まれます。

気になる犯罪行為はどうでしょうか。一番多かったのは「盗難」の11%で、回答者数にして14名です。3,300人中14名ということは、1,000人当たり4件余。もちろんこれは警察への届出件数ではないため、ただの目安にしかなりません。しかしオランダ全国の平均盗難発生率は、大量の難民が到来する前の2013年で住民1,000人当たり38件と圧倒的に高い(オランダ中央統計局調べ)。どうやら、難民収容施設がある地域の盗難発生率が、全国平均に比べて高いと考える必要はなさそうです。

条件

自分の暮らす自治体に収容センターができるとしたら容認できますか? という意識調査では、国民の2/3が容認できると答えており、実際に設置されたあとでは3/4に増えています。この「容認度」も、収容センターの近隣に住む人たちと、そうでない人たちの意識に差があります。「無条件で容認する」と答えた近隣住民が47%だったのに対して、圏外の住民は36%でした。

また「条件付きで容認する立場の人たちが重視している条件は、

・受け入れる難民の数と、受け入れ側市町村の人口とのバランス(=比較的小人数のグループに分けて受け入れること)
・収容センターの設置場所
・近隣への迷惑行為を最小限に抑えるための措置
・難民たちが抱えているトラウマをケアするための指導・支援
・オランダ社会に上手く溶け込めるような指導・支援

などです。

受け入れる難民の構成(組み合わせ)に十分注意すべきだという鋭い指摘もありました。たとえば、もとから対立している民族や宗派の人たちを同じセンターで受け入れたら、いずれ揉め事が起こるのは自明です。

幸いなことに、難民の受け入れをただの負担と思う人たちばかりではありません。難民を受け入れた地域の人たちの1/4は、自分の生活圏に難民がやってきたことを楽しい、あるいは興味深い経験と捉えています。これも、受け入れ前の場合と比べて2倍の高さです。

結局のところ、「何事も案ずるより産むが易し」なのでしょう。

 

著者/あめでお(「ミナミも、ええよ。」連載。オランダ・アイントホーフェン郊外在住)
かれこれ10ンンン年。この国に住みはじめてから変わっていないのは、出た邦での連載だけになりました。いまだにオランダの奥座敷を目指して、ほふく前進中。完全なる地域離脱型につき、お届けする話は、ほぼすべて全国レベルの話題です。

image by:  Peter Braakmann / Shutterstock.com

 

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