AIIBは、中国「シルクロード経済圏」のATMとして利用される

Songquan Deng/Shutterstock
 

リーマンショック以降

しかしこの成長モデルは、2008年のリーマンショックでピークを迎えた金融危機によって維持が困難になった。2008年と2009年に世界経済は縮小し、その結果として中国経済も大きく減速する可能性が出て来た。

一方中国の輸出工業の労働力は、農民工と呼ばれる発達が遅れた内陸部からやってきた出稼ぎの農民が中心だった。中国全体で2億人ほどいると見られている。もし金融危機による世界経済の縮小で倒産が激増し、失業率が急上昇すると、職を失った農民工は暴動などを引き起こし、社会不安の原因になりかねない。

そのため中国政府は、社会不安の高まりを未然に防止する必要からも企業倒産を極力防ぐ方針を採用した。政府系銀行の貸し出し金利を低下させ、資金が必要な企業にはそれこそ無尽蔵に融資をし、可能な限り倒産を回避した。その結果として失業は抑止され、社会不安の増大も回避された。

バブルの発生と政策金利の上昇

しかしこの政策は、バブルの発生というマイナスを伴っていた。銀行から市場に流れた資金の多くは、不動産投資や、経済成長を焦る地方政府による開発プロジェクトへと流れた。このため大都市圏の不動産価格は極端に高騰し、また地方では、地方政府が推し進める開発プロジェクトのため土地を追われた農民による暴動が相次いだ。

これらの矛盾を緩和するために、2010年の末から中国政府は政策金利を段階的に引き上げた。しかし当初はバブルの崩壊も懸念されたものの、実際にはそうならなかった。銀行の融資に頼れなくなった不動会社や地方政府は、「利財商品」と呼ばれる金融商品で資金を得るようになった。「利財商品」とは、企業や地方政府が政府の監督外のノンバンクを通して販売する高利回りの債権である。この販売が好調な限り、バブルは継続し、地方政府の開発プロジェクトの拡大も続いた。

そしてこの結果として、「陰の銀行システム」と呼ばれる巨大な金融システムが形成され、500兆円を越える資金の規模にまで拡大した。

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