AIIBは、中国「シルクロード経済圏」のATMとして利用される

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バブルの崩壊と経済の減速

しかしながら、これは長くは続かなかった。中国経済の成長が続くにつれ賃金は急激に上昇し、安い労働力の供給地としての位置を失うことになった。中国に進出していて外資系の企業は、次第に賃金がもっと安い東南アジア諸国などに移動し、中国からの撤退が相次ぐようになった。これは、中国経済を大きく減速させる。

また中国政府は、引き続き高金利政策を堅持したため、景気はさらに減速した。その結果として不動産の需要が減退し、不動産価格は大きく下げに転じた。バブルの終焉である。

さらに地方政府が推進していた開発プロジェクトも、景気が減速するにつれて停滞し、多くのプロジェクトが放棄されるようになった。

これらの結果、多くの企業や地方政府が「陰の銀行システム」を通して販売していた高利回りの金融商品である「利財商品」も破綻した。それに伴い、「陰の銀行システム」の主役で、政府の監督の及ばない金融会社やノンバンクも破綻した。結局、「陰の銀行システム」に融資していたのは表の政府系銀行が多く、「陰の銀行システム」の破綻が表の銀行の破綻を誘発するという最悪の可能性が現実になろうとしていた。

2014年、中国政府は破綻の懸念があった大手の政府系銀行に多額の支援を実施し、表の銀行システムの崩壊は防止した。しかし、政府の介入によって突然のクラッシュは回避されながらも、不動産バブルの崩壊、地方政府の開発プロジェクトの縮小、「陰の銀行システム」の破綻はゆっくりと進み、中国経済の成長率を圧迫する要因になっている。

内陸部の開発と内需依存型モデル

これがいまの中国経済の状況である。決してよい状況ではない。このような状況を脱し、新たな成長の軌道に入るために中国政府が打ち出した政策が、内需依存型モデルへの転換と、遅れた内陸部の開発である。

先にも書いたように、中国では賃金がかなり上昇し、そのため都市に在住する中間層が1億人を越える規模で誕生した。これらの中間層が生み出す内需を基礎にゆるやかな成長を目指すモデルだ。

そして次は、遅れた内陸部の経済を製造業の中心として開発し、内陸部の経済に主導されて中国が発展させるという政策である。この方針のもと、2009年頃から中国政府は内陸部の省に盛んにインフラ投資を開始した。

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