AIIBは、中国「シルクロード経済圏」のATMとして利用される

Songquan Deng/Shutterstock
 

AIIBとシルクロード経済圏構想

さて、中国経済のこうした現状を背景にいま大きな話題になっている「AIIB」と「シルクロード経済圏構想」を見ると、それらの本来の目的がよく見えてくる。

周知のように「新シルクロード経済圏構想」とは、「一帯一路」とも言われるように、中国からヨーロッパまでの海路を整備すると同時に、中国とヨーロッパを中央アジアを経由して結ぶ鉄道網を整備する構想だ。鉄道網の主要路線はすべて開発の焦点になっている内陸部の省を通過する。

内陸部の経済発展にとって最大のネックになっているのは、市場へのアクセスがないということだ。中国の最大市場はヨーロッパである。これまで中国からヨーロッパまでの輸送路は沿岸部の諸都市の海路であった。だが、内陸部の省は沿岸部までの距離が遠く、内陸部の生産品の輸送費はコスト的に相当に高くついてしまっていた。この輸送路の問題が、内陸部の開発の大きなネックになっていた。

「シルクロード経済圏構想」の柱のひとつである中国とヨーロッパの鉄道網の整備は、内陸部の発展のネックとなっている輸送路の問題を乗り越え、内陸部と中央アジア、そしてヨーロッパの市場を直接結ぶことを目的にした壮大な計画である。

そして「AIIB」は、これに必要な資金を提供する機関として機能することは間違いない。

新たな成長軌道に入る中国

このように見ると、「シルクロード経済圏構想」と「AIIB」によって中国の内陸部の発展が加速されることは間違いないと見てよいだろう。中国政府は金融機関などの資金を注入するなどしてバブルの突然のクラッシュを防止しながら、鉄道網の整備を急ピッチで進めて内陸部の発展を加速させつつある。

あと少しすると、中国はこれまでの沿岸部中心の輸出モデルから、中間層の内需と内陸部の発展にけん引される安定成長のモデルに移行する可能性が極めて高い。

このような見通しが十分に立つからこそ、イギリス、ドイツ、フランスなどの主要先進国を含む57カ国がいち早く参加を表明したのである。

日本ではいまだに、バブルの崩壊から中国は長期的に低迷し、最終的には国内の暴動で分裂するとのファンタジーのようなシナリオがまことしやかに流通している。このようなシナリオが幻影にしか過ぎず、実現しようもないことは明らかである。

>>次ページ もしかしたらいまが投資の仕込み時期か?

print
いま読まれてます

  • AIIBは、中国「シルクロード経済圏」のATMとして利用される
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け