今年の就活戦線は、昨年に続き学生優位の売り手市場と報道されるなど、一時期の就職氷河期に比べると少し明るい状況のようです。とはいえ、まだまだ先行き不透明な日本経済。突然の業績悪化などで予定していた新卒採用数を減らさなければ…ということも十分考えられます。今回の無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』では、企業が内々定を出した後で取り消しをした場合は法律上どのように解釈されるのかについて。人事担当者のみならず、就活中の学生さん、親御さんも必読の内容です。
内々定の取り消しは法律違反になるのか
実は、私は以前に車の営業をしていました。そのときに先輩によく言われたことがあります。
「印鑑をもらうまでは、契約じゃない」
つまり、それまでは絶対に気を抜くなという営業のアドバイスです。確かに、どんなに「買っていただけそうな」お客様でもそれが必ず契約につながるわけではありません。「家族に購入を反対された」「他社で良い車をみつけた」など、様々な理由で契約にいたらないこともたくさんありました(あ、いえ、たくさんではないですかね)。もしかしたら、みなさんの中にも似たような経験をお持ちの人もいるかも知れません。
このように、契約は印鑑がひとつの区切りになるわけですが、それでは、「採用」はどうでしょうか。例えば、採用するつもりだったけど、急な事情で採用ができなくなったとします。その場合はどの状態までだったら、断ることが認められるのか。
採用までには、3つの段階があります。まず、選考段階、次が、内々定段階、最後が、内定段階です。選考段階であれば、まだ何も決まっていないわけですし問題なく認められるのは言うまでもありませんが、内々定、内定の場合はどうか?
それについて裁判があります。
ある不動産会社が、内々定通知をした新卒の学生にその取り消しを行いました。その学生は、納得いかないとして、会社に損害賠償を請求しました。
では、その結果どうなったか?
まず、法律的な前提をお話しますと、内々定と内定は大きく違います。
内々定では、基本的には労働契約は認められません(つまり採用したとは認められないということです)。
ですが、内定は本人に採用と伝えるわけですので労働契約が成立したと認められます。そのため、内定通知後に、内定を取り消すことは解雇と同じ意味になるのです。
では、この裁判は内々定なので、問題ないのでは、と考える人が多いでしょう。ところが、この裁判では会社が負けました。