病床「10年後に1割削減」がなぜ可能と言えるのか。朝日一面に異議あり

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要は介護保険が立ちゆかなくなったことを覆い隠すために、もともとケチケチだった制度を、さらに超ケチケチに作り直すということだ。利用者の負担を増大させ給付を削減することで、介護保険自体を延命させよういうわけだろう。しかし、それで楽になった介護保険財政を当てにして、今度は医療費の削減を実現しようとする。介護の世界はますます欺瞞的なものになり、保険料徴収だけが肥大化し、サービスは極小に向かって縮んでいくのではないか、そんな想像が頭に浮かぶ。最後の最後は、純粋な徴税そのものに転化したりして。

社会保障の諸制度が、自らの生き残りのために、負担を押しつけ合っている構図にも見えるが、もともと介護保険は、医療のなかから介護を切り出し、そこに公費と保険料と自己負担を合わせた発足時4兆円のファンドを当て、民間企業の参入も刺激しながら作り上げようとしたものだが、同時に医療保険制度の延命のために作られた側面がある(要は、目先を変えた、社会保障費用名目での増税。その意味では今回の消費税増税と同根)。自前の保険財政を持ちたいという老健局官僚の宿願達成であると同時に、医療保険の財政健全化に奉仕するものでもあったはずだ。

今回の計画は、高齢化のピークを迎える前に、制度の外観を取り繕うため、高齢者とその家族にいっそうの負担を押しつけようということだから、結局のところ、医療からも介護からも弾き出されてしまう人々が大量に生まれる時代となるだろう。介護報酬の増額など、公的な資金の使い道を大きく変えなければ、介護難民は激増する。

朝日新聞はシレッとこの記事を載せているが、これが、《朝日》の編集委員諸氏も大賛成していた「税と社会保障の一体改革」の中身だということは、どこにも書かれていない。消費税は上がったが、社会保障は貧しくなった。そしてさらに消費税は上がる。

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『uttiiの電子版ウォッチ』2015/6/16号より一部抜粋

著者/内田誠(ジャーナリスト)
朝日、読売、毎日、東京の各紙朝刊(電子版)を比較し、一面を中心に隠されたラインを読み解きます。月曜日から金曜日までは可能な限り早く、土曜日は夜までにその週のまとめをお届け。これさえ読んでおけば「偏向報道」に惑わされずに済みます。
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