大塚家具・久美子社長に聞いた「過去最悪の赤字」でも前向きなワケ

 

今後大塚家具は何をすべきか?

現状、大塚家具は変わりゆく市場環境の中で、うまく適応し成長を軌道に乗せるために数々の新たなチャレンジに取り組んでいます。

たとえば、BtoBの強化策として企業向けには高級レストランを展開するひらまつと業務提携し、ひらまつが新たに推進するホテル事業のパートナーとして家具の提供を開始しました。また、7月末に開業するザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町の全客室とパブリックスペースの主な家具、小物、アクセサリーを大塚家具が納品。他にも地方百貨店や住宅メーカー、マンションディベロッパー、福利厚生を手掛ける企業との提携なども積極的に展開しています。

また、価格や価値に敏感なお客様に対しては、リユース事業を通してリーズナブルな価格で質の高い家具を提供することにも注力。昨年10月に「リンテリア」というリユース家具を取り扱う子会社を設立して事業に本腰を入れます。また、本体ではリユース品を取り扱う店舗も8店舗まで拡大し、好調な売り上げを背景に今後はさらに拡大していく予定です。このリユースの開始に伴って修理メンテナンス部門を強化するなど、顧客へのアフターサービスの充実も図っています。

他にも、様々な形でポイントが付与されるポイントシステム「IDCパートナーズ」を開始したり、それまでは70種類しかなかったネット店舗の品揃えを2,400種類にまで拡大したりと顧客満足度を高めていく施策も次々と実施しているのです。

ただ、一つ問題点があるとすれば、それはメディアの影響で消費者の抱くイメージと実際のビジネスに大きなギャップがあることでしょう。

「大塚家具=高級家具」というイメージを持つ消費者が多いかもしれませんが、実際に店舗に足を運んでみると、高級家具ばかりでなく、実にお値打ちな家具も数多く展示されていて、「大塚家具=コストパフォーマンスの高い家具」という実際の姿を伝えていかなければ、新生大塚家具の成功はありえないのです。

今後はメディア戦略をうまく活用して、大塚家具の真の姿を消費者に理解してもらえるかが一つの鍵となるでしょう。

「新生大塚家具」は1日にしてならず

今回の取材を終えて、大塚久美子社長の「大塚家具はニトリやIKEAのような方向を目指しているわけではない。大塚家具は家具の販売業ではなく、お客様の生活を豊かにする住生活ソリューションを提供する会社になりたい」という言葉が強く印象に残りました。

家具というモノを販売するのではなく、「『生活の豊かさ』というお客様のクオリティ・オブ・ライフを向上させるお手伝いをする」というコンセプトでビジネスを展開するためには、社員の意識改革を始め、大きな変化が求められます。

急激に変化することが難しいということを考えれば、その過程で様々な問題が発生することは事前に予想されていることであり、今回の赤字も想定内のことといっても過言ではないでしょう。ここで浮足立たずに、浮き彫りとなった問題を一つ一つ解決していけば、いずれは思い描いたビジョンを達成することができるはずです。

「ローマは1日にしてならず」という諺があるように、独自の道を行くという覚悟を決めた大塚家具もその実現には時間がかかり、今後も数々の試練が襲ってくることは間違いありません。

果たしてその試練を乗り越え、思い描いた新生大塚家具を実現することができるのか?

今後、大塚久美子社長の真価が問われることになります。

画像提供: 大塚家具

 

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