真田丸『第36話』裏解説。なぜ雨の日に城を攻めるのは不利なのか?

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NHK大河ドラマ『真田丸』を放送直後にワンポイント解説する人気連載シリーズ。今回は「雨の日に城を総攻撃するリスク」について、『真田丸』の戦国軍事考証を担当する西股総生さんが詳しく解説します。

今回のワンポイント解説(9月11日)

今回、徳川秀忠と本多正信が、雨を理由に上田城の総攻撃をためらうシーンがあった。雨は視界をさえぎり、人の気配を消す。だとしたら、雨にまぎれて城に近づき、一気に攻め込む、という戦法もありなじゃないか? そう思った人もいるかもしれない。でも、実戦経験の豊富な正信は、雨の日に城を攻めるのは不利と判断した。なぜだろう?

まず、雨が降れば足元がぬかるむ。守備側は、城外のどこに道が通っていて、どこに田んぼがあり、小川や水路があるか知っている。対する攻め手は、勝手のわからない土地を動き回りながら城に接近することになる。後続の部隊が増水した水路に行く手をはばまれたり、退却する部隊が田んぼにはまったりでは、うまくない。

次に、城を攻めるためには、坂を駆け上がったり、土塁や切岸をよじ登ったり、虎口に走り込んだりしなくてはなせない。一方の守備側は足場のしっかりした土塁や石垣の上で敵を迎え撃つことができる。足場の悪さが不利にはたらくのは、どう考えたって攻める側なのだ。

しかも、雨の中では鉄炮が使えない。えーっ、それは守備側も同じでしょう? な〜んて、言わないで下さいよ。城というのは、屋根のあるところで鉄炮を使えるシステムのことだ。要するに、忍びの集団による奇襲攻撃ならともかく、ガッチリと備えを固めている城を相手に、全軍を挙げた総攻撃をかけるなら、雨はどうしたって不利というわけだ。

もう一つ、今回のストーリーでポイントになっていたのが兵粮。「兵粮攻め」という言葉があるけれど、実際に兵粮の手当が大変なのは、攻め手の方だ。攻め手は敵地に乗り込むわけだし、人数が多い分消費する兵粮も格段に多いからである。今回のストーリーには、この原理がうまく活かされている。(西股総生)

今週のワンポイントイラスト

久しぶりに昌幸の軍略ターン! 兵糧、兵力差、地形に加え、制作予算、撮影スケジュールも考慮しなきゃ…(みかめ) 

 

文・絵/TEAM ナワバリング(西股総生・みかめゆきよみ)

ナワバリスト(城郭研究家)の西股総生率いる、お城(主に山の城)と縄張りを愛する3人組

 

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