ここにきて浮上した「2島返還論」。北方領土は棚上げが吉な理由

 

世界一の戦略家は、ロシアとの友好を勧める

世界最高の戦略家と呼ばれるエドワード・ルトワックは、日本人むけ著書『中国4.0 ~暴発する中華帝国』の中で、「日本にとってのロシアの重要性」について、詳しく触れています。一部引用してみましょう。

最初の課題は、ロシアのシベリア開発をどこまで援助できるかだ。これにも中国が関わっている。中国がシベリアの資源を獲得してしまうと、自己完結型の圧倒的な支配勢力となってしまう。

 

シベリアを当てにできない中国は、船を使って天然資源を輸入する必要があるため、海外に依存した状態となる。この場合、必ず「アメリカの海」を通過しなければならない。
(144p)

ところがロシアを吸収できれば、中国はその弱点を克服できる。これによってわざわざ「海洋パワー」になる必要はなくなるからだ。

 

この意味で、シベリアを中国の手に渡さないことは、日本にとって決定的に重要なのである。
(145p)

説明が必要ですね。日本は、なぜアメリカとの開戦を決意したのでしょうか? そう、「ABCD包囲網で石油が入ってこなくなったから。エネルギーがなくなれば、戦争もできず、経済活動もできない。

今の中国を見てみましょう。この国は、日本と同じく、エネルギーを中東に依存している。つまり、中東からタンカーで石油を運んでいる。ところが、その海路はアメリカが支配している。もし、なにかのきっかけで米中対立が深刻になったとしましょう。その時、アメリカは、中国が「エネルギーを買えない状態」をつくり出すことができる。つまり、「ABCD包囲網」時の日本と同じ状況に追い込むことができる。そうなると、中国は終わりです。

ところが、中国がロシアから石油・天然ガスを無尽蔵に買うことができるようになれば? いくらアメリカでも、この流れを止めることはできない。これがルトワックのいう、「自己完結型の圧倒的支配勢力」の意味。だから、日本は、シベリア開発に入り込み、「中ロを分断させろ!」と言っている。「大戦略」面での日ロ関係の重要性がわかったところで、領土問題を考えてみましょう。

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