真田丸『第45話』解説。敵に余計な一手間をかけさせる築城のセオリー

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NHK大河ドラマ『真田丸』を放送直後にワンポイント解説する人気連載シリーズ。今回は、徳川軍を見事「完封」した出城「真田丸」の軍事的役割について。大坂城攻略を目ざす徳川軍にとって、なぜ真田丸が「目の上のタンコブ」だったのか? ドラマ『真田丸』の軍事考証を担当する西股総生さんが考察しています。

今回のワンポイント解説(11月13日)

大坂城攻略を目ざす徳川軍にとって、真田丸は目の上のタンコブ」のような存在だった。なぜか。大坂城の惣構に攻めかかろうとする徳川軍の横っ腹を衝く場所に真田丸が築かれていたからだ。つまり、大坂城の惣構を攻めるためには、まず先に真田丸を攻略しなければならない。でも、 敵に余計な一手間をかけさせるのは、築城の基本だよね。

このように、敵に攻撃目標の変更を余儀なくさせて、余計な一手間をかけさせる施設のことを、専門用語では「側面陣地」という。思い出してみよう。第1次上田合戦では、徳川軍が一気に上田城に殺到したため、信幸隊に側面を衝かれて崩れた。側面陣地にあたる戸石城を、無視したためだ。これに懲りた徳川軍は、第2次上田合戦では先に戸石城を占領した。あらかじめ、側面陣地をつぶしておいたわけだ。「側面陣地」という言葉そのものは、近代軍事学の用語。でも、戦国武将たちは、その原理を経験則でちゃんと理解していたのである。

もうひとつ、秀吉から指月伏見城の強化を命じられた昌幸は、木幡山に出丸を築くというアイデアを思いついた(史実ではありませんが)。指月伏見城を攻めようとする敵を、横合いから衝く位置に木幡山があることに着目したからだ。つまり、側面陣地を築くことによって、伏見城を攻めにくくしよう、というプランである。

おわかりでしょうか。伏線は、ずっと前から張られていたのだ。ドラマの中で2度の上田合戦を体験し、伏見城強化プランを横目で見ていた幸村は、側面陣地の原理を体得していた、というわけだ。

ところで、真田丸は孤立無援の城砦だった、と主張する人がいる。たしかに真田丸は、独立戦闘が可能なだけの規模と構造を持っていたと思う。なにせ、数千の軍勢(近代なら旅団規模)が入るわけだからね。でも、敵の大軍を引き受けて孤立無援で華々しく戦うつもりなら、もう少し惣構から離れた場所に築くんじゃないのかなあ。それでも、戸石城や木幡山出丸のように、理論上は側面陣地として機能するはずだ。

そこを、あえて惣構のすぐ外に築いたということは、あくまで惣構と連携して戦うつもりだったから、と考えるのが、理にかなっているのじゃないだろうか。双方の兵力や地形などから、その方が有利と判断したのだと思う。

きっと、昌幸の残した『兵法奥義』の中に、ヒントになる図があったんだろうなあ(笑)。それが幸村の記憶のどこかに、すり込まれていたのじゃないだろうか。その秘密を知りたい方はこちら…

 

◇12 月 23 日(金) トークイベント「信繁と幸村の2016 年をふり返る

第 1 部「今こそ語りたい第2次上田合戦と大坂の陣」…西股総生

第 2 部「サブカルで楽しむ歴史とドラマ」…西股総生・みかめゆきよみ・磯部深雪

日時 :12月23日(金) 14:00~15:00/15:30~17:00

場所 : 新宿クラブツーリズム(西新宿駅前・新宿アイランドウィングビル)

コース番号 
第1部 C2021-912 入場料 1,000 円 

第2部 C2022-990 入場料 500 円

(西股総生)

今週のワンポイントイラスト

真田丸の完封!家康の脳裏にはこれまで苦しられてきたあの人やあの人の顔が…(みかめ)

家康は自力で武田軍主力に勝った事は一度もありません(西股談)

 

文・絵/TEAM ナワバリング(西股総生・みかめゆきよみ)

ナワバリスト(城郭研究家)の西股総生率いる、お城(主に山の城)と縄張りを愛する3人組

 

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★イベント情報★

◎11月19日(土) 16:00~18:00(開場15:45)

神保町書泉グランデにてトークイベント開催!

『マンガ&スマホで楽しむエンタメ東国戦国史!』by. 西股総生(アシスタント・いなもとかおり)

場所:神保町書泉グランデ(7 Fイベントスペース)

参加費 500 円

西股総生先生による、500 円(参加券代)で楽しめる東国戦国史☆ 新作お城コンテンツのお披露目も!! ここでしか手に入らない小冊子も企画中!

※参加希望者はできるだけ、書泉グランデの方に予約をお願いします(03-3295-0011)

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新府城は『真田丸』第1回の舞台。谷戸城は、天正壬午の乱における北条軍の野戦築城と考えられる城。二つの城を歩きながら、幸村が真田丸築城に込めた思いと秘密を解き明かします。

旅行代金 15,500 円(昼食付)

コース番号 03337-098 でお問い合わせ下さい。

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土で造るか、石を積むか? その違いはどこにあるのか? 『真田丸』で山城に目覚めた皆さん、いっしょに考えてみませんか? 山歩きのできる靴と服装でご参加下さい。

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