さようなら700系。ニッポンを「元気」にしたあなたの功績を忘れない

 

その700系が「晩年」に差し掛かって来ました。

東海道・山陽新幹線の「花形」である『のぞみ』の主力からは、完全に外れてきていますし、一時期はほぼ100%が700系であった『ひかり』にも、N700の運用が目立ちます。更に『こだま』も一部がN700になっているのです。『こだま』の場合は停車駅が多いために、N700の「通勤電車なみ」の起動加速力が力を発揮するということもあるようです。

そんな中、700系は東海の保有車両の一部が西日本に転籍となって、山陽区間の『ひかりレールスター』や『こだま』という格好で「余生」を送るという展開にもなって来ています。

それどころか、実はもう700系の「廃車」がどんどん始まっているのです。最盛期には91編成だったということをお話しましたが、既に20編成以上が2014年度までに廃車され、今年度に入ってもどんどん廃車が出ています。

一方で、N700の方は「a」への改造がこの夏でほぼ完了して、全編成が東海道区間での285キロ運転に対応することになります。そうすると、更にもう数編成「N700A」の新造もされるようで、ある時点になると東海道区間は全列車が最高285キロ運転というスジ(ダイヤ)になって行くかもしれません。そうなると、車体傾斜装置のない700系には、もう居場所はなくなってしまいます。そう考えると、700系の「衰退」は思いもかけない速度で進行するかもしれません。

そんな中、この7月末に広島からの帰途には、岡山始発の「ひかり」で東京までという、現時点では「700系を満喫できる」運用に乗車することが出来ました。確かにN700と比較すると起動時の加速は「もっさり」ですが、60キロぐらいで速度が乗ってからの加速は力強いし、巡航速度の際の振動や騒音はN700には及ばないものの、300系のワイルドな乗り心地から比べればやはり天国です。余りにも「当たり前の存在」として、話題に上ることの少ない700系ですが、私は名車だと思います。

私は「ラストラン」にこだわる「葬式鉄」ではありませんが、このような名車が静かに「晩年」を迎えている姿への愛惜は、ひとかたならぬものがあります。当分の間、東海道山陽区間では700系充当のスジを選んで乗り続けて行きたいと思います。

imaged by:Wikipedia

 

『冷泉彰彦のプリンストン通信』
著者/冷泉彰彦
東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは毎月第1~第4火曜日配信。
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※記事内「ひかりレールスター」「こだま」の部分を一部修正させていただきました(2015年8月8日 20:00)

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