古代ローマ時代の浴場文化を描いたヤマザキマリ氏の漫画「テルマエ・ロマエ」が以前、映画化され大ヒットしましたが、その映画の中でも描かれたように、古代のローマ人にとっては公衆浴場は日常生活の一部で、数多くの浴場が点在していました。無料メルマガ「建築遺産ギャラリー」では、今回、ローマ皇帝カラカラが作り上げた巨大風呂「カラカラ浴場」の遺跡を紹介しています。
イタリア『カラカラ浴場』
image by: Wikipedia
今回は世界遺産《カラカラ浴場》のご紹介です。
所在地 イタリアの首都ローマにある、古代ローマ時代の大浴場の遺跡
「ローマ歴史地区、教皇領とサンパオロフォーリ・レ・ムーラ大聖堂」の 名称で世界遺産に登録されています。
212年から216年にかけて、ローマ皇帝カラカラ(正式名マルクス・アウレリ ウス・アントニヌス・カエサル)が造営した公衆浴場で、当時はアントニヌス浴場ともよばれていました。
総面積11万m2の巨大浴場で、一度に1,600人の市民を収容でき、冷水浴室、高温浴室、サウナのほかに、図書室や体育室なども備え、入浴料も安価なローマ市民のための総合娯楽施設でした。
浴場の内と外に飾られていた彫像などは、ローマ時代の美術館とよべるほど質の高いもので、現代の美術館に展示されている数多くの作品が、これらの公衆浴場から発掘されています。
ローマの庶民たちが、これらの傑作で飾られていた浴場を、「われら貧乏人のための宮殿」と呼び、日々の生活を潤していた様子を、崩れかけた壁面やアーチ状の入口、床のモザイク装飾などに垣間見ることができます。
6世紀に「ゲルマン民族の大移動」で破壊され、入浴習慣も失われていき、残されたタワー状の遺構や水道施設だけが、かつての賑わいを伝えていますが、近年、大規模な野外オペラが開催されるなど、新たに注目を集めています。
image by: Wikipedia