カーシェアは通過点。トヨタが見据える未来は「呼ぶ」クルマ

nakajima
 

自身が起業したソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.がトヨタにソフトウェアを提供することが決定して以来、自動車の未来について質問を受けることが多くなったという世界的エンジニアの中島聡さん。メルマガ『週刊 Life is beautiful』では、自動車は「買うもの」から「必要に応じて呼び出して借りるもの」に変わると断言します。

自動車ビジネスの未来

UIEvolution がトヨタ自動車にソフトウェアを提供することがアナウンスされてから、未来の自動車に関して質問されることが増えました。多くの人は、Apple や Google が自動車の将来にどんなインパクトを与えるか、そして、そこで UIEvolution という会社がどんな役割を果たすのかを聞きたいようですが、私自身はもう少し先を見ています。

上に書いた「垣間見える未来」という話で言えば、自動運転の時代には、自動車は「買うもの」から「必要に応じて呼び出して借りるもの」に変わることは明確です。自動運転の時代になれば、「乗らない時に自動車を駐車場に止めておく」こと自体が、自動車と駐車場という固定資産の有効活用という意味で無駄なのです。

そんな中で、Tesla Motors のアナリスト向けのカンファレンスコールで、そこをついた鋭い質問をしたアナリストがおり、Elon Musk がそれに答えるのを拒否する、という事件がありました(Listen to Elon Musk’s Awkward Silence After A Question About Tesla’s Self-Driving Fleet)。 

いろいろな解釈が可能ですが、Elon Musk 自身もそんな時代が来ることを強く意識しており、短期的には Uber に自動車を売りたいが、Tesla Motors 自身がそんなサービスを提供する未来も十分に考えられる、という話だと私は解釈しました。

ちなみに、トヨタは都市型の新しい小型自動車 i-Road に関しては、パーク24と組んでカー・シェアリング・サービスの実証実験を始めるとアナウンスしましたが(参照)、これは自動運転の時代が来る前に、自動車が「買うもの」から「必要に応じて借りるもの」に変わりつつあることの良い証だと私は思います。

カーシェアリングの形で提供される i-Road が、トヨタの「イノベーションのジレンマ」を打ち破る鍵になる可能性は十分にあると私は見ています。

image by: トヨタ

 

週刊 Life is beautiful』より一部抜粋

著者/中島聡(ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア)
マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。
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