なぜ、マツモトキヨシは首位から陥落したのか?
ドラッグストア業界は順調に成長を続け、2016年度は前期比5.9%増の6兆4916億円に達しました。特に調剤事業の成長が著しく、2016年度は前期比9.6%増の7849億円を記録するなど、調剤医療費においてドラッグストアのシェアはおよそ10%を占めるまでに拡大してきています。今後も業界では、ドラッグストアで薬の調剤を依頼する顧客の割合を50%以上にまで高めていこうと各社が力を入れているのです。
この調剤事業で圧倒的な強みを発揮するのが業界首位に躍り出たウエルシアホールディングス。
全国に展開する1500店舗のうち、およそ1000店に調剤を併設。2016年度の調剤事業の売上高は1000億円規模に達し、およそ400億円とみられるマツモトキヨシホールディングスの2倍以上にまで規模を拡大し、大きな差をつけているのです。
また、ドラッグストア業界は首位のウエルシアホールディングスが6000億円台、続くツルハホールディングス、マツモトキヨシホールディングス、サンドラックが5000億円規模で続き、コスモス薬品、スギホールディングスが4000億円台、そしてココカラファインが3000億円台と突出したリーダーが存在せず、コンビニなどに比べれば寡占化が進んでいない業界構造になっています。
ただ、業界の特徴として規模の経済が働きやすいために、M&Aによる規模拡大が業界順位を大きく左右することになります。
実際にウエルシアホールディングスは、2013年度までは売上高が3000億円台と首位のマツモトキヨシに遠く及びませんでしたが、2014年11月にイオンの子会社になると、親会社のイオンは関連ドラッグストアの合併を加速させ、短期間で6000億円企業にまで登り詰めてきた経緯があります。
業界2位に浮上する見込みのツルハホールディングスも、イオンの資本が入るなどイオンとつながりの深いドラッグストアチェーンですが、ウエルシアと同じくM&Aで成長を加速させてきました。ツルハはもともと北海道発祥の企業ですが、関東を地盤にする「くすりの福太郎」を傘下に収めたり、四国を拠点とするレディ薬局を買収したりするなど、全国各地にその勢力を拡大してきたのです。
マツモトキヨシホールディングスも同じように、地方のドラッグストアチェーンとの業務提携などで規模を拡大させてきましたが、ウエルシアホールディングスやツルハホールディングスには及ばず、遂に首位を明け渡すことになったのです。