【実録】人生を奈落の底に突き落とす、恐ろしい「男の嫉妬」

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米国育ちで元ANA国際線CA、さらに元ニュースステーションお天気キャスターからの東大大学院進学と、異例のキャリアを持つ健康社会学者の河合薫さん。自身のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』の大型連載「他人をバカにすることで生きる男たち」の第8回目に書かれているのは、「嫉妬」には2種類あるという興味深いお話。河合さんは「保身だけを考え、権力を組織のためではなく自分のためだけに使う生き物」を総称して「ジジイ」と定義し、「彼らジジイの嫉妬は実にいやらしい」と面白い考察を紹介しています。

ジジイの嫉妬は、実にいらやしい

自分を守るために「ジジイの壁」の中で息を潜める人びと。彼らの精神構造は実に幼稚で、野蛮です。ジジイの得意技は、ヨイショにゴマスリ……、それに加えて“嫉妬”です。女性の嫉妬がふわふわしたモノであるのに対し、男性のそれは大抵の場合「出世」がらみです。

そもそも「自分はもっとイケる!」と信じていたのに「イケなかった」のがジジイたちです。彼らはイケてる人に嫉妬し、「これでもか!」といわんばかりのいやらしさを発揮します。

嫉妬ーーー。どちらも「女偏」ですが、どっちか1つでもいいから「男偏」に変えた方がいいじゃぁないか、なんてことを本気で思ってしまうほど、ジジイの“エンビー型”嫉妬は根が深い!です。エンビー? はい。エンビーです。パンピーでもなければ、アンジーもない。エンビー型の嫉妬です。

大型連載「他人をバカにすることで生きる男たち」の第8回目。今回は、「他人の人生を奈落の底に突き落とす“エンビー嫉妬”の恐怖」についてお話しましょう。

 

「伝説の男」から窓際へ。リアル転落人生録

「僕たちの年代の多くは、A氏に憧れてこの会社に入りました。僕もその1人です。僕もあんな仕事をしてみたい、世の中に大旋風を巻き起こしたい、そんな青い考えで入社したんですよね。でもね、そのA氏が晩年どうなったかという、“窓際”です。嫉妬に羽目られたんです。昨年定年を迎えて今は小さな関連会社に行きましたけど、役職はないし、ヒラですよ、ヒラ!男の嫉妬は、ホントに醜いです」

これはある製造関係の会社に勤める男性の会社であった、“リアル事件”です。

彼も、彼の同僚たちもA氏を「伝説の男」だとリスペクトしていました。A氏の話に誰もが耳を傾け、彼のまねをした。おそらくそういった部下たちの態度も、上司がA氏に嫉妬する原因になっていたのでしょう。A氏は上からはやたらと煙たがられあることないことデッチあげられ「人生」を大きく変えられてしまいました

彼にあこがれて入社を希望する学生までいたのですから、もっといい待遇をうけてもよかったはすです。ところがA氏の上司たちは「A氏だけに頼ってたんじゃ組織はダメになる。もっとバランスをとって、いろんな人にチャンスを与えなくちゃ」を合い言葉に、ヒット作のあとA氏が出す企画をことごとく否定し、A氏の仕事をことごとく阻止し、挙げ句の果て窓際に追いやりました。

アピールする業績のない「ジジイ」たち。彼らの口癖は「バランスをとる」。このひとことが、嫉妬を嫉妬でないようにしてしまったのです。

「サラリーマン社会で大切なのは、どんなモノを作ったかじゃないんです。ラインの上司、つまり誰にどれだけ好かれるかってことの方が大事。ゴルフやって、カラオケ行って…。悲しいけど、これが現実なんですよね」

男性はため息混じりにこう話していました。

伝説の男を窓際に追いやった、男の嫉妬。自分よりも有能だと思う部下をつぶす上司や同僚たち。こういう嫉妬劇は、何も今始まったことではありません。

例えば源頼朝の義経への仕打ちなんて(いきなり日本史ですが)、誰もが知る過去最大の「男の嫉妬」劇。源平合戦の最大の功労者である義経を、「勝手に判官の地位を得たから」などと “いいがかり”をつけて追いやったのは、嫉妬以外の何物でもありません。

このような後ろ向きで未熟な嫉妬心は、「エンビー型嫉妬」と呼ばれています。嫉妬の対象となっている他者を引きずり下ろすことで自分の優位性を守ろうとする愚かで、「しょーもない」感情です。それまで称賛されていた人が些細な失敗やスキャンダルで転落していくのを密かに喜んだり「他人の不幸は蜜の味」という気持ちも、エンビー型の嫉妬です。

 

集団に嫉妬が生まれるのは「評価」のせいだった

嫉妬という感情がなぜ、わくのか?それは昔から多くの研究者の興味の的でした。中でも米国の社会心理学者のエイブラハム・テッサーが行った心理実験は、かなり話題となりました。

テッサー博士は「評価」が伴う集団ではエンビー型嫉妬が牙をむくとし、「人間は自己評価を維持するために、他者との心理的近さ、遂行能力、課題との関連性によって行動様式が変わってくる」という“自己評価モデル”を提唱しました。これは「あることを行う際、それが自分の評価につながるか否かで、親密な人に対する態度が変わってくる」というモデルです。

例えば友人同士でペアを作り、互いにヒントを出し合って、それに基づいて答えを当てるというテストを実施した場合、「評価」のありなしで行動が変わります

(1)テストの結果で個人を評価すると告知する→友人に、難しいヒントを出す傾向が高まる
(2)何も告知しない→友人に、回答につながるやさしいヒントを出すようになる

評価されると分かった途端、相手を惑わすような行動様式が強まる。一方、評価が伴わない状況だと、どうにかして相手が答えやすい情報を与え、相手をサポートする。「評価される」という基準が加わるだけで、「友人の好成績を自己評価への脅威と無意識に判断する」という悪魔が顔を出し、ついつい相手が答えづらいヒントを出してしまうのです。

人間って恐い。でも、これが人間なのです。そもそも他人を羨むおぞましい感情である「嫉妬」は、誰の心にも宿ります。「俺は嫉妬なんてしない!」と言うアナタも、例外ではありません。だからこそ人は嫉妬という感情を抱いたとき、それ恥ずかしいと思い、やたらと「正義」をふりかざす。正義で嫉妬心を隠そうと画策する。

例えば、先のA氏のように成功した人に対して、

・だってあの人、モノは作れても管理能力ないもんね。
・だってあの人、過去の栄光だけで生きてきたでしょ。
・だってあの人、組織人としてはダメな人だったじゃない。

といった具合にあれやこれや屁理屈を言って、「出世させなかった」組織を肯定することって、どこの会社にもあるんじゃないでしょうか。

その裏には、
・ 自分の方が、管理能力が高い。
・ 自分の方が、今もがんばっている。
・ 自分の方が、組織人として勝っている。
といった平均以上効果が存在する。

平均以上効果ーー。vol 005でお話ししたとおり、自分を「平均以下」と評する人はごくまれで、大抵は自己評価を高く見積もっています。このちょっとだけ高い「自己評価」を守るために、他者を貶め自尊心と自己愛を守ろうとする。自己を守ろうとするのは人間の本能です。

目標達成に役立つ「ジェラシー側嫉妬」

ただ、嫉妬は嫉妬でも、いい嫉妬、組織に必要な嫉妬もあります。エンビー型嫉妬に対し、こちらは「ジェラシー型嫉妬」と呼ばれています。ジェラシー型嫉妬では「あの人のようになりたい」「あの人には負けたくない」と競争心理がかき立てられます。ジェラシー型嫉妬をバネに切磋琢磨する。ジェラシー型嫉妬とは自分の能力を伸ばすことで「相手を超えよう」とするポジティブな感情です。

(中略)

実際、一流スポーツ選手の多くはこのジェラシー型嫉妬が強く、モチベーションを維持するのに役立っていることがわかっています。スポーツ選手から「自分のベストを尽くすだけです」「自分のこれまでやってきたことを発揮します」「自分が納得できる演技をめざします」という言葉が出るのも、ジェラシー嫉妬だからこそ。わざわざそれを公言することで、エンビー型にならないように、“おまじない”をかけているのです。

さて、アナタはどうでしょうか?え? 俺にも“おまじない”を教えてくれって?少なくとも「勝ち組の下っ端でもいいからぶら下がっていたい!」なんて気持ちが1%でもあるとムリ。どんなおまじないも効き目がありません。

……あ、ひとつだけありました! アレさえ聞けば、なんとかなるかもしれません。嫉妬が巻き起こす“もうひとつの事件”を知れば、なんらかの抑止力になる可能性があります。それについては、次回お話することにいたしましょう。

(河合薫さんのメルマガ『デキる男は尻がイイ–河合薫の『社会の窓』』2017/01/11号からの抜粋です。全文を読むには、初月無料の購読を、また大型連載「他人をバカにすることで生きる男たち」は、バックナンバーを購入すると読むことができます)

 

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