もはやテロ。籠池容疑者をヒーローに仕立て上げるマスコミの愚

 

先日、民間ロケットの打ち上げに失敗したベンチャー企業の役員を務める堀江貴文氏が、かつて代表を務めた旧ライブドアに東京地検特捜部が入ったのは2006年1月16日のこと。株価操縦のための風説の流布や、虚偽記載などで、前川喜平前文科次官風にいうなら「株式市場という公平公正な賭場を歪めた」といった容疑です。

営業中の上場企業に特捜が入るのは例がなく、当時はもちろん、今もって「国策捜査の指摘は少なくありません。国策捜査と批判する声は、従来の特捜の介入基準からして誤魔化した金額が少なく事業破綻もしていないというものです。

同じく虚偽会計が疑われる東芝は、東証一部から二部に降格しましたが、いまだ上場が維持され特捜が動かないことに評論家の三浦瑠麗氏など疑問を呈し、腐します。

私は旧ライブドア株主として、これは形式論からだけの詭弁、あるいは机上の空論と考えます。

なぜなら、当時の旧ライブドアと同一人格であった創業者の堀江貴文氏は、「カネで人の心は買える」とか「もっと勉強しないとずる賢い人に騙されちゃいますよ」など、額に汗して働く人々、その勤勉性をあざ嗤うかの言動を繰り返していたからです。

当時ワイドショーが彼を追った理由は、人を人とも思わぬ態度であり、法の隙間、株式市場の歪みをついての錬金術への批判が7割、残りは嫉妬や羨望といったところでしょう。

金額の大小にしても、合法的な株価分割を繰り返す手口も含めた株価の操縦、そして釣り上げた株価をもっての買収による成長で、種銭とも言える部分、あるいは事業の核心に触れる部分での不正は、東芝の例と同列に語ることはできません。

端的にいえば、当時の社会システム良識と常識への公然たる挑戦であり破壊を目論んでいた、とみられていたのです。だから、特捜が動き、旧ライブドアは株式市場が追放され、私の保有株式は紙切れとなり、いまも引き出しに眠っています。

三浦瑠麗氏も含め、国策捜査との批判する人は基準とかルールの厳格運用を求めますが、それは学級会のような清く正しく理路整然としているだけの幼い議論です。

社会は良識と常識を下敷きとしており、すべてのルールが明記されているものでもなければ、すべての悪事を取り締まることもできないという諦念の上に成立します。

仮に10億円までの不正会計が見逃される、と明記されていれば、9億9999万9999円までは可能となってしまいます。反対に1円でもダメ、を厳格に守るためにチェックし取り締まるならば、その取り締まりコストは膨大なものになってしまいます。

大袈裟な話ではなく、すべての企業の数だけその会計をチェックする役人が必要となり、役人が企業に取り込まれることもあれば、役人がミスすることも考えれば、さらにその役人をチェックする役人も置かなければ1円単位の不正の撲滅は不可能だからです。

当時のワイドショーは、いささか過剰な面もありましたが、少なくとも特捜の動きを支持しました。社会通念上の正義」から「人の心は金で買える」と広言する堀江貴文氏の言動をとしなかったのです。

なお、この発言を堀江氏は後に否定しますが、彼自身が書いたとされる著書にしっかりとあり、こうした発言の変遷も、籠池氏に重なるのは私の乱視が進んだせいでしょうか。

特捜が入る前から「インサイダー取引」の疑惑が繰り返し報じられており、いわゆる「郵政解散選挙」のときに、広島6区から選挙に出たのも国会議員の不逮捕特権を手に入れるためだったと囁かれ、ついでにいえば事実上の小泉自民党による擁立で、その後の民主党による政権交代の遠因のひとつになったことは間違いありません。翌年、逮捕されたとき、「そんな人物を事実上、担ぎ出した自民党」として批判されていたからです。当時の幹事長代理は安倍晋三現総理。

籠池容疑者夫妻と重なります。補助金詐欺事案そのものは、表立っては誰も言いませんが、よくあること。過失を含めればもっと増えることでしょう。

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