ネットで見かける悪評は、あまり気にしない方がいいと思う。一人の執着的な患者が、悪評をあちこちにバラまいていることが多いからだ。医者の人格否定や個人攻撃は適度にスルーしていいが、「一度に5種類の薬が出された」「初診が5分で終わってしまった」などの事実記載は、参考にしたほうがいい。
よく、「目を見てくれず電子カルテばかり見ている」というクレームも多い。なぜなら、医者にはコミュニケーションに難のある自閉スペクトラム症傾向の人もそれなりにいて、アイコンタクトを取れない人が多いからだ。彼・彼女らに悪気はなく、よく勉強しており、融通は利かないが治療には熱心だ。しかし、相手の気持ちや考えを想像する能力に欠けているため、共感を交えた治療となると難しい。
精神科の場合に特徴的なのは、他の診療科以上に患者と医師との「相性」が重要なことだ。相性が悪い医者-患者関係では、治療はうまくいかない。処方する薬も、プラセボ効果とは逆のノセボ効果(副作用ばかり出る)が出やすくなる。診察がお互いにとって苦痛極まり、治療者としても、相性が合わない患者とつき合いたくないのが人情だ。
幸いわたしの場合は、あからさまに主治医交代を求められたのは、医師経験20年ほどだが3、4人レベルで済んでいる(内心では、違う医者がいいと思っていた患者はかなり多いだろうが)。良い「相性」を築くのが下手な医者もいて、それはその医者の能力不足ということになるだろう。同じように、医者と良い「相性」を築けず、ドクターショッピングばかりしている患者もいる。5人の医者と出会えば、一人ぐらいはまずまずな相性の医師に出会えるのではないか。わたしの先輩医師が教えてくれたことだが、5人医者を代えても合う医者がいないと言われるときには、医者よりもその患者のほうに問題があるという。
ネット時代の現代では、昔と違って他者の評価を家にいながらにして知ることができる。しかし、アマゾンや食べログのレビューがしばしばヤラセや炎上などで問題となるように、ネットの情報は、玉石混淆である。まして医者との相性を数値化するのは、人工知能が発達した現在でも不可能だ。
わたしならば、やはり「口コミ」を重視する。情報源がなければ、かかりつけの内科医などに信頼できそうな精神科医を聞いてみる。あるいは、保健所に相談して、情報を得るのも策だろう。しかし医者のことは、医者がよく知っているものである。今日ご紹介した情報を参考にして、アナログに進めていくしかないのが現状だと思う。
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