ゴミ出しをしなくなったら要注意。認知症老人を孤立させない方法

 

で、マンションの理事長さんは、「実は、前々からバルコニーのゴミに対する苦情があって困っていたんです。しかし、Aさんは近所付き合いもなく、どうしたもんか…と思っていたところです。このままにしておいていいとは思わないけど、管理組合としてできることには限界がある…でも、理事会で話し合ってみます…」と。

地域包括支援センターの方の粘り強い働きかけで、まず、理事の方が認知症サポーター講座を受けることから始まりました。認知症を理解すると、Aさんが周りと付き合わないことも、ゴミを貯め込むことも、いろいろルールが守れないことも、みんなが迷惑だとか人付き合いが悪いと感じていたことが、認知症ゆえのことだったんだとわかり、Aさんは一緒にくらしてきた仲間なんだから、できることをしたいという気持ちが居住者の中に沸き上がって来て、自宅で暮らせる限界までAさんをサポートしようということになりました。今まで認知症に気づかずに、迷惑な人だと思っていたことに対するお詫びの気持ちもあったのではないかと思います。

まず、介護保険を利用して基本的な生活をサポートすることにして、管理組合、管理員さん、地域包括支援センター、ケアマネが一体になってAさんのマンションでの暮らしを支えることになりました。住民は、同じマンションの仲間としてできることはなんだろうと考え、Aさんとお茶を飲みながら話しましょうとお誘いしました。Aさんはとても喜んで参加するようになり、自分の話もするようになりました。

Aさんのためにと始めたことですが、これまであまり付き合いのないマンションで、住民同士が集まってお茶を飲みながら話をするという機会が定着しました。回覧板を回しながら声掛けをしたり、料理のおすそ分けをしたりということもごく普通に行われるようになりました。

その後、Aさんの症状が進み、24時間の見守りが必要になり、グループホームに入居することになりました。マンションの皆さんは、Aさんは、きっとマンションに帰りたいと言って、帰ってくるじゃないかと、ハラハラして様子を見ていましたが、そこはグループホームの方もよく心得ていて、上手に、「ちょっと泊まっていく? 泊まってもいいのよ」と言いながら、グループホームになじませてくれ、グループホームで落ち着いて生活されるようになりました

マンションの住民は、ホッとしたような、自分たちとの時間を忘れられるのがちょっと寂しいような、でも、Aさんのために何かをしたというより、Aさんのお蔭で、とても大切なご近所の結びつきをつくってもらったと感じていると言います。誰かのために役立ちたい、自分が必要とされていると思う時、人は、大きな一歩を踏み出せるものですから。

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