【書評】年間20万件近い暴動。習近平体制に不満を募らす中国人民

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先日掲載の「習近平、事実上の『皇帝』に。憲法改正で国家主席の任期撤廃」等でもお伝えしたとおり、中国における権力のほぼすべてを手中に収めることに成功した習近平国家主席。権謀術数渦巻く彼の国で、何がそれを可能にしたのでしょうか。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』の編集長・柴田忠男さんが取り上げているのは、メルマガ『石平の中国深層ニュース』の著者で、「中国を誰よりもよく知る男」として著名な評論家・石平(せきへい)さんが著した一冊。習氏がここまで上り詰めた足跡が余すところなく綴られている話題の書です。

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習近平の終身独裁で始まる中国の大暗黒時代
石平・著 徳間書店

石平『習近平の終身独裁で始まる中国の大暗黒時代』を読んだ。5年間にわたる習近平の足跡を辿り、2期目の習近平政権の布陣と「習近平思想」を検証して、今後の中国の行方を読み解く。著者も一時は、習近平をとんでもないスケールと力を持つ稀有の大政治家かもしれないと思っていた。

後になって、紫禁城を案内する習近平が、トランプに一瞥されてポケットから両手を出した映像を眺めていると、やはりこの人は覇気のない小心者としか思えなかったという。このみっともない映像にわたしも笑った。平凡にしてたいした器量のない男である。それがどうして大国の強力な独裁者になり得たのか。その力の源泉と秘密はいったいどこにあるのか。興味津々の成功物語を読む。

共産党の党規約や憲法には、総書記や国家主席は2期以上は続けられないと明記されているのだが、2016年の第18期6中全会において「習近平同志を核心とする党中央」という表現を盛り込ませ、自らを党の核心として位置づけさせることに成功した。党内の権威・権力を掌握すれば、もうやりたい放題なのだ。

建国の父である毛沢東と並ぶ偉大な指導者となった習近平が、党規約や憲法を改正するのは難しいことではない。習近平は2022年の党大会でも引退せず、次の3期目5年間も居座り続ける。しかも、5年後、10年後の後継者候補を意図的に外した。ポスト習近平は不在なのだ。少なくとも4期、できれば終身その地位にいたいという思惑である。とんでもない強欲な独裁者ができあがった。

要するに、中国共産党は習近平の私物と化し、「習近平党になるということである。そして世代交代による新陳代謝は停止し、まともに仕事をする者がいなくなる。誰も習近平を止められない。いまや、絶対的な指導者どころかほとんど神扱いである。「習近平総書記を党の核心として確立することが歴史の正しい選択であり、これは我が党全体と人民の共通した心の声」と人民日報が伝える。

マスコミは習近平への提灯評論ばかり。習近平が単なる政治的指導者にとどまらず、思想的指導者となった。そして習近平が毛沢東からマルクス思想を受け継いだという話になった(笑:ウソ)。習近平は政治も経済も外交もすべてを指導する全知全能の指導者であり、マルクスを代弁し、中国を代弁するンだって(爆:大ウソ)。毛沢東時代の個人独裁と恐怖政治が再び甦ろうとしている(これは事実)。

毛沢東は82歳で死ぬまで権力を保持し、トウ小平は85歳まで党中央軍事委員会主席を務めた。習近平はそれくらい、あるいはそれ以上の権力保持を狙っているはずだ。習近平は、人民解放軍の建軍100周年にあたる2027年の時点で74歳、社会主義の現代化を実現させるとしている2035年で82歳、中華人民共和国の建国100周年は2049年で、このとき96歳。それまで生きてるつもりらしい。

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