3.親と離れて過ごす
次に挙げられるのは、「親と離れて過ごす時間・場所」です。主に該当するのは、保育園・幼稚園での時間。
子どもは、親とは違う考え方やコミュニケーションスタイルに触れて、多様な価値観の存在(正しいことは1つじゃない)に気がついたり、同じことを伝えるにも様々な方法があることを学んだりしています。また、集団の中の1人として、自分の話ばかり聞いてもらえない・自分のやりたいことだけをやっているわけにはいかない・譲れないことはハッキリ言わないと通じない、などの家庭とは違う境遇も、大切な体験です。これらの体験からは、協調性を身につけたり、自己主張の重要さに気づいたりするのでしょう。
この「領分」には前述の2つと異なる点があります。それは、いつでも自由に「子どもの領分」を出て「親の懐」に戻ってくることができない、というところ。そのため、子どもはいくらかの緊張感を心に残しながら、次々に訪れる事件・発見・体験・経験を一生懸命に受け取ることになります。
ここにおいて親ができる支援は、
「聞けども訊かない」
です。子どもが自分から話してくる時は、しっかり向き合って、ただ“聞いて”あげましょう。子どもが自分の経験を消化・吸収して前に進むことの助けになります。
ただし、親の側から「今日は何をしたの?」と“訊く”ことは極力控えた方が良さそうです。親から園(=子どもの領分)での様子を尋ねられる経験を何度かすると、子どもの中には「親は関心を持っている、尋ねられたら答えられるようにしたい」という意識が、知らず知らずのうちに芽生えます。そしてその意識は、日々園で過ごす間も、心の一部を占め続けることになります。
しかし一方で、前述の通り、子どもは自分のキャパシティをフル稼働して日々過ごしています。そこに別の意識を割り込ませることは、子どもの学び・成長を支える観点からは、不適切と言えそうです(どうしても園での様子が気になるのであれば、お迎えの時に聞いたりノートを活用するなどして、大人同士で対処できる方法のご検討を!)。