なぜ日本のサラリーマンの年収はいつまで経っても低いままなのか

 

日本は実は世界一の金持ち国

日本というのは、実は世界一の金持ち国なのです。先にも述べましたように、日本の個人金融資産残高は現在1,800兆円です。一人当たりの金融資産1,000万円を大きく超え、アメリカに次いで世界第2位です。しかも、これは金融資産だけの話であり、これに土地建物などの資産を加えれば、その額は莫大なものです。また日本は、対外準備高も全ヨーロッパの2倍もあり、国民一人当たりにすると断トツの1位です。対外純資産は約3兆ドルで世界一です。日本は世界一の債権者の国でもあるのです。つまり「日本人は世界一の金持ち」といっていいのです。

なぜ国民の多くは、世界一の金持ち国としての実感がないのでしょうか?その答えは、実は明白です。先ほど述べましたように、日本のサラリーマンの給料が下がっているからです。日本人の平均給与は、この20年間で20ポイントも下がっています。この20年のうちには、戦後一番目と二番目の長さの好景気があったのです。にもかかわらず、サラリーマンの給料は上がるどころか下がっていたのです。安倍首相の財界への呼びかけで、この数年は若干、給料が上がっていますが、この20年で下がった分に比べれば焼け石に水なのです。

そして先進国の中で、この20年間で、給与が下がっているのは、先進国ではほぼ日本だけなのです。この20年のうち、先進国はどこの国でもリーマン・ショックを経験し、同じように不景気を経てきました。でも、OECDの統計によると、先進国はどこの国も、給料は上がっているのです。EUやアメリカでは、20年前に比べて平均収入が30ポイント以上も上がっています。日本だけが20ポイントも給料が下がっているのです。つまり欧米と比べれば、50ポイントも給料の増加率が低いのです。

逆に言えば、日本のサラリーマンは、すぐにでも金持ちになれるということでもあります。今より、給料が50ポイント上がれば、ほとんどのサラリーマンはかなり豊かな、金持ちの気分を味わえるはずです。

しかもそれは決して無理なことではないのです。日本の企業が、他の先進国並みの給料水準にすれば、すぐに達成できることです。そして、日本の企業は、そういう資金的な体力は十二分に持っているのです。企業は内部留保金(貯金)を天文学的に増やし続けています。2017年末の時点で、内部留保金は446兆円にも達しています。この14~15年で倍以上に膨れ上がっているのです。

446兆円という金がどの程度の金額か、一般の人には想像ができないでしょう。国の税収の8~9年分にも及ぶのです。

これを見れば、「日本企業はバブル崩壊以降、かなり儲かっており、長い好景気の時期があった」「にもかかわらず、サラリーマンの給料が上がらなかった」「だから、国民のほとんどは好景気を実感していない」ということなのです。この図式は、誰も否定できないはずです。もし否定できるものなら、ちゃんとデータをあげて否定してほしいものです。そして、この図式を見たとき、日本経済がやらなければならないことは明白です。「企業が社員の給料を上げる」ということです。政府には、他の余計な経済対策など一切しなくていいから、この点のみを集中してやって欲しいものです。

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