国民を殺す気か。隠蔽政権が出した統計不正という大本営発表

 

経済統計学会からも総務省の統計委員会あてに声明が出された。

戦時期に公的統計がその機能を果たしえなかったことがわが国を無謀な戦争へと駆り立てたことへの痛切な反省から制定された統計法は、統計の真実性の確保を最優先の目的として規定し、その法制度の下にわが国の統計行政は遂行されてきた」

統計不正を厳しく断罪するこの声明に関連して、杉尾議員は「歴史の教訓に基づいて統計法ができたとするなら政治から統計への介入は厳に戒めるべきだ」と指摘。

専門家ではない中江元秘書官が厚労省の統計担当者を呼んで統計手法の変更を示唆したことについて「統計への政治介入ではないか」と追及した。

安倍首相は「統計的見地に基づかない恣意的操作を排し客観性正確性が保たれることが極めて重要」とタテマエを述べたものの、中江秘書官については「専門家ではないが統計のユーザーの立場だ」と、意味不明の擁護論を展開した。

首相や秘書官はユーザーであり、ユーザーなら専門性の強い統計に口を出してもいいということだろうか。民間の統計利用者なら愚痴として片付けることもできよう。だが、総理の仕事を補佐する秘書官が統計手法に疑問を呈したのだ。普通のことではない。安倍首相はこうも言った。

「3年間、サンプルの入れ替えを行っていない中において段差が生まれてくる。3年前にさかのぼって修正する。そこは誰が考えてもおかしい

これが当時も今も変わらぬ安倍首相自身の本音なのだろう。

ところで、「戦時期に統計が機能を果たしえなかったことが、無謀な戦争へ駆り立てた」という経済統計学会の指摘は、安倍政権が持つ情報隠ぺい体質の危険性にも通底する。

戦前の統計については、各省庁が統計の内容を秘密にしていたので、現在、その詳細を知ることは難しい。比較的研究が進んでいるのは1930年代に内閣統計局が実施した家計調査だ。

これは経年的かつ大規模な統計として知られるが、目的にそった募集や推薦で調査対象者を任意に選定する有意抽出法が採られていた。

無作為抽出法は戦後になってはじめられたものだ。つまり、戦前の統計が国民全体の実情を反映したものとは言い難い。

ただし、戦争遂行に欠かせない基礎データである石油、食糧などの備蓄量は担当省庁で把握していたはずである。

実際、日本政府は日米開戦となった場合に、国の総合力を算定し、勝ち目があるかどうかの検討を行っていたのだ。そして、データや分析に基づくシミュレーションで導いた結果は「日本必敗」だった。詳しく説明しよう。

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