ついに「ダウ平均」銘柄からも除外。米GEが抱え続ける負の遺産

 

GEは次々と新しい製造業を成功させ、一時は製造業を変革させるモデルといわれてきた。2000年代に入ると製造業からデジタルサービス業の技術によって次の産業革命をリードしようと試みたが、成長への展望を見出せないまま虚しく時は過ぎていった。リストラが先行しデジタル分野でも大規模な縮小が行なわれ、巨大企業化したGEは器用な転換ができなかったのである。

しかしこの間にヨーロッパのシーメンスをはじめ日本企業などは、IOTこそ次の産業の主役とみてこの分野に力を注ぎ、延命を図っている。またGAFAと呼ばれる設備を持たないソフトの企業が次々と現れ株式の時価総額ではベストテンを占めるようになってきた。

むろん、GAFAがいつまでも現在の位置を占められるとは限らず、国境を越えて稼ぐGAFAに課税するなど新たな規制案も浮上している。

ただ重厚長大の時代は過ぎ、世界で最強・最大の複合企業として長い間産業界に君臨してきたGEの時代は去りつつあるようだ。かつての名門GEがどんな形で再生してくるか、多くの企業は固唾をのんで見守っているのではなかろうか。

(財界 2019年3月26日号 第491回)

参考情報

9日のブルームバーグによると8日の米株式市場で、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の株価が急落。同社の低迷予想を的中させたことで知られるJPモルガン・チェースのアナリスト、スティーブ・トゥサ氏が「売りの投資判断を再開したことが背景にある。同氏はリポートで、「市場はGEが直面する課題や潜在リスクの深刻さを過小評価する一方、細かな明るい要素を過大評価している」と指摘。GEのフリーキャッシュフローは極めて抑制されており、収益力が限定されるとの見方を示した。と報じています。

8日のロイターによると欧州連合(EU)欧州委員会は8日、米複合企業ゼネラル・エレクトリック(GE)に対し、2年前にデンマークの風力発電機メーカー・LMウィンドを買収する際に誤解を招く情報を提出したとして、制裁金5,200万ユーロ約5,840万ドルを科したと報じています。

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ジャーナリスト。1942年生。慶応大学経済学部卒業後、毎日新聞社入社。大蔵省、日銀、財界、ワシントン特派員等を経て1987年からフリー。TBSテレビ「ブロードキャスター」「NEWS23」「朝ズバッ!」等のコメンテーター、BS-TBS「グローバル・ナビフロント」のキャスターを約15年務め、TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」に27年間出演。現在は、TBSラジオ「嶌信彦 人生百景『志の人たち』」出演。近著にウズベキスタン抑留者のナボイ劇場建設秘話を描いたノンフィクション「伝説となった日本兵捕虜-ソ連四大劇場を建てた男たち-」を角川書店より発売。著書多数。NPO「日本ニュース時事能力検定協会」理事、NPO「日本ウズベキスタン協会」 会長。先進国サミットの取材は約30回に及ぶ。

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【著者】 嶌信彦 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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