3つ目は集中力が途切れないということです。血中でBCAAはトリプトファンというアミノ酸と拮抗しています。それはBCAAとトリプトファンが同じアミノ酸トランスポーターによって、血液脳関門を通り抜けるためでもあります。運動などによってBCAAの代謝が進み、結果として血中のBCAA濃度が下がってくると、相対的にトリプトファンが脳関門を通過しやすくなるのです。
そして、トリプトファンは脳内で「セロトニン」の材料となります。セロトニンは、ノルアドレナリン、ドーパミンと並んで脳内の三大伝達物質と呼ばれるものです。その中でのセロトニンの役割は、ノルアドレナリンやドーパミンといったヤル気満々系の暴走を抑制することで、結果として、心のバランスを整えるような役割を担っています。就寝前などにセロトニンが出にくいと不眠の問題が出てきますし、日中でのセロトニン不足は、怒りっぽくなったり、イライラしたりします。
そんな大切な役割のセロトニンですが、運動やトレーニング中に大量に発生することによって筋収縮のシグナルが減ってしまい、結果として、運動強度を維持するうえではマイナスに作用してしまいます。どんよりとした、けだるい症状といってもいいかもしれません。あくまでもバランスが重要なのです。
血中のBCAAの濃度をトレーニング中にも維持させることは、必要以上のセロトニンを作らせない、つまり、集中力を維持させていくという効果につながるのです。トレーニング時にBCAAを飲む理由の一つはこのセロトニンの過剰分泌を抑制することにもあります。
さて、質問に戻りますと、結論としてはトレ前とトレ直後にEAAを摂取して、トレ中はBCAAを中心に摂取するのがより効果的な摂取方法だと思います。
筋肉を動かす事によってBCAAが特異的に代謝されるということは、EAAのバランスを崩す事でもありますから、トレーニング中は敢えて代謝されやすいBCAAを多くしておき、また同時に幾つかの機能も活用するのです。そして、その前後にEAAをしっかりとバランスを取った状態で摂取すると理想的と言えそうです。更には、トレ後のEAA摂取の後には、やはりホエイプロテインの摂取も必要です。
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