「アップル潰し」に米国も激怒。総務省に寄せられた辛辣な意見

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8月23日に発表された、改正電気通信事業法に対するパブリックコメントが話題となっています。「アップルつぶし」との異名もあるこの改正法に当然ながらアップルは猛反発し、在日米国商工会議所は日本政府を名指しして厳しく追及。ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんは自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で、今回の省令案を「日米貿易戦争に発展してもおかしくない」とした上で、「総務省はアメリカを敵に回してまでも押し切るつもりなのか」と、その覚悟を質しています。

省令案パブコメにアップルやクアルコムが辛辣な意見――総務省に「アメリカを敵に回す覚悟」はあるのか

改正電気通信事業法の施行に向けて、総務省に寄せられたパブリックコメントが公開された。キャリアや個人など67件の意見が集まる中、注目はアップルクアルコム在日米国商工会議所からも意見があったという点だ。当然のことながら、アメリカ勢は総務省の意向に対して反対の姿勢を示しているし、そうした意見に対して総務省は聞く耳を持たないスタンスを維持している。

例えば、在日米国商工会議所は「継続使用の条件なしにモバイル端末を購入するユーザーに提供する利益に関する過度の制限は、消費者から購入の際の選択肢を奪い、消費者の満足度を低下させ、電気通信産業全体を縮小させてしまうことになる。民間企業の努力によって生み出されたビジネスモデルやビジネスパートナー間のエコシステムは繊細な性質を有しており、民間企業が有する柔軟性が一旦失われると、経済成長に対するマイナスの影響が容易に引き起こされる可能性があることに日本政府は十分留意しなければならない」と日本政府を名指して厳しく追及

また、クアルコムも「省令案においては、継続利用以外の通信役務の利用及び端末の購入等を条件として行う利益の提供についても上限2万円として規制対象とすることとされています。通信役務の継続利用を条件とはしない契約に対する規制は、これまで、国会において明確に議論の俎上に上っておらず、これを法律案のその他適正な競争関係を阻害するおそれのあるものとの文言に含まれるものとして省令で定めることは、政府への委任範囲を広く解しすぎていると言わざるを得ません。また、当該利益の提供の許容範囲を上限2万円と政府が定めることは、却って事業者間の競争を阻害し、結果的に、消費者負担を増加させることにもなりかねず、再考を求めます」と議論のプロセスに疑問を呈している

さらにアップルは「健全な競争がある市場では、さまざまな選択肢があることが重要です。残念なことに、この度の総務省令案のいくつかの条文は競争の抑制につながり、日本のお客様に対しさらに高い価格で今より少ない選択肢という状況をもたらすものである」と省令案を非難した

今回の省令案は「アップルつぶし」との異名もあり、アップルとしてはさすがに看過できないのだろう。クアルコムとしても、5G時代に向けて、日本で5G対応のハイエンドスマホが売れなくなってしまうのは困るはずだ。そうした企業の意見を代弁する立場として在日米国商工会議所がしゃしゃり出てくるのも理解できる

今回の省令案は単なるスマホの割引をやめさせるのにとどまらず、今後は日本とアメリカの貿易戦争に発展してもおかしくない。現在、アメリカと中国でやりあっているため、トランプ大統領としても気にかけていないだろうが、仲のいいティム・クックCEOが告げ口すればトランプ大統領の矛先が日本に向いて来ることだって考えられる

総務省はアメリカを敵に回してまでも今回の省令案を押し切るつもりなのか。総務省の「覚悟」を確認したいものだ。

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