富士山噴火へも備え。災害派遣で戦車や装甲戦闘車が活用される訳

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静岡県は、災害対応にあたる組織のトップが集まる「指揮官会議」を毎年1回開催していて、メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事アナリストの小川和久さんも危機管理の専門家として出席したそうです。その際に、キャタピラ走行の戦車、装甲戦闘車の活用法が説明され、南海トラフなどの大地震だけでなく、富士山をはじめとした噴火災害も想定しなければならない静岡において、参加者の理解を深めていたと評価しています。

静岡県の「指揮官会議」

11月8日、陸上自衛隊富士学校(静岡県小山町)で静岡県の「指揮官会議」があり、私も関係者として出席してきました。

南海トラフ地震などの大災害に備えて、1年に1回、関係組織を指揮する立場のキーパースンが出席し、「顔の見える関係」を維持していこうという試みです。川勝平太静岡県知事に率いられた静岡県危機管理部、富士学校長、海上自衛隊横須賀地方総監、航空自衛隊航空教育集団司令官、中部航空方面隊司令官、陸上自衛隊第1師団長など自衛隊側を中心に、警察、消防、海上保安庁などの指揮官が顔を揃えました。

そのおり、装備品の展示・説明・体験搭乗に関連して、キャタピラで走る戦車、装甲戦闘車の火山災害に当たっての活用法の説明があり、それを熟知している陸上自衛隊以外の出席者の胸に刻み込まれた様子でした。

キャタピラを備えた装甲車両と戦車は、1991年6月の雲仙普賢岳の火砕流災害に投入されました。タイヤ式の車両では走れない火砕流で熱された地域を走って様々な活動をするためです。このとき、60式装甲車と同時に投入された74式戦車は搭載している赤外線暗視装置によって火砕流の発生に目を配る役割も果たしました。

2014年9月の御嶽山の噴火では、富士教導団の89式装甲戦闘車4両が投入されました。こちらは、登攀路《とうはんろ》を確保できる7合目くらいまでは登ることができますし、装甲によって火山弾から身を守るシェルターの役割を果たすことができ、3人の乗員以外に7人の隊員を乗せていることから、救助活動に当たることもできるからです。

静岡県にとっては、南海トラフ地震と同様に富士山の噴火も関心事です。富士教導団が噴火災害にも備えていることがわかり、有意義な1日となりました。

富士山が大噴火すれば、火山灰が首都東京や羽田、成田の空港などの国家機能を奪うことは間違いありません。むろん、富士山麓の御殿場市などの住民の安全確保は最優先事項です。そんな事態は起きてもらいたくありませんが、備えはしておかなければなりません。

万一の時、もう御嶽山の時のようにキャタピラの装甲車両に機関砲が搭載されている姿を見ただけで、「どうして戦車を出してくるのか」といった認識不足による批判は出ないと思います。(小川和久)

image by: Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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